管理組合の「先取特権」は
容易に行使できない?

 管理組合には「先取特権」という権利がある。これは、特定の債権者が債務者の財産について、他の債権者に優先して自己の債権の弁済を受けることができる権利のことだ(詳しくは『マンションの管理費等の「滞納」は、いずれ必ず社会問題に発展する』を参照されたい)。管理費等のような特定債権については、他の一般債権より優先して債権の請求ができるのだが、これを行使するのも簡単なことではない。

 先取特権を行使する場合、

 区分所有者の死亡
 ↓
 親族へ連絡
 ↓
 法定相続人の調査
 ↓
 法定相続人との接触と交渉

 という流れが考えられる。法定相続人が判明し、スムーズに任意売却まで運べば問題はないが、物件に抵当権が付いているなどして任意売却ができないケースや、法定相続人とうまく話がまとまらない場合には、管理組合が法定相続人に対して訴訟を起こすことになるケースもある。

 あるいは、競売という形式で売却することも可能だが、この場合もかなり複雑な手続きを踏むことになり、競売が成立するまで早くて1~2年、長い場合には5年以上の時間がかかり、大変な手間とコストも必要になる。