“ビジネス・イズ・ソーシャル”<br />企業内SNS「チャター」を核に、“ソーシャル革命”を促すセールスフォース・ドットコムのたゆまざる革新

 “Business is Social.” 米セールスフォース・ドットコムのCEO、マーク・ベニオフは9月にサンフランシスコで行われた同社の年次イベント「Dreamforce 2012」で、会場を埋め尽くす聴衆に、何度もそう叫んだ。「CRMをクラウドでサービスする事業を切り開いてきた我々自身が5年前に大きく変わった。顧客最優先よりも重要なことがある。企業はこれまでと全く違う手法で、顧客、パートナー、従業員とつながらないといけない」。

 9月にFacebookの月間アクティブユーザーは10億人に達したと発表されたが、その他のサービスも含めると全世界のソーシャルネットワークユーザーはいまや45億人以上と言われる。確かに、この5年間に消費者を取り巻く環境は大きく変わった。

 ソーシャルネットワーク上で日々交わされる会話は数億におよび、そのなかには、企業や商品の評判につながる話題も当然含まれている。こうした声に耳を傾けることは、企業のマーケティングに貴重な知見をもたらすであろうことは疑いようもない。しかし、膨大なデータに対し徒手空拳で臨んでも徒労に終わるだろう。どのようにそれを効率的・効果的にできるようにするか。ビジネスにとってはそれが課題だ。

 Dreamforce 2012でも、バーバリー、ヴァージン アメリカ航空、コカ コーラ、フォード、豪コモンウェルス銀行などさまざまな産業・企業における、消費者との新しいつながりを模索するマーケティング活動の事例が紹介された。しかし、いずれもできていることとこれからやろうとしていることが渾然一体となった紹介で、派手で新しい時代を感じさせ印象深いものではあるが、収益へのインパクトについては不明瞭なものであった。

 この点については同社も認める。「どこの企業も従来のマーケティング予算の一部をシフトさせて、実験を繰り返し、有効なやり方を模索している段階。企業の経営者にも、ソーシャルが鍵だと考える人は多いが、投資収益性に疑問があることも事実だ」(同社のソーシャル・マーケティング製品Marketing Cloud担当エグゼクティブ・バイスプレジデント、ブレット・クイナー)

 マーケティングにおけるソーシャル革命は、不可欠なものであり今後有望なビジョンなのかもしれないが、端緒についたばかりで効果のほどはまだ不明確だ。にもかかわらず、ベニオフCEOは、ソーシャルの価値を消費者との関係性にとどまらず、パートナーとの関係、従業員との関係などにも、積極的に導入すべきだと強調する。

 「これからの企業には、ビジネスを構成する六つの領域のそれぞれでどれだけソーシャルの力を活用できているかを示すメトリック(指標)が必要だ」と訴える。六つの領域とは、セールス(CRM)、顧客サービス、マーケティング、コラボレーション、ワーク(人材・業績管理)、イノベーションを指す。