4月上旬のこと。B課長はAが提出した業務書類の内容を、急ぎ確認する必要が生じたためAを探していた。しかし部屋中のどこにも姿がないので、Aの隣席であるCに、

「A君がどこにいるか知らないか?」

 と尋ねた。Cは柱時計に目をやり、

「A係長はたばこ部屋で一服中です。今10時15分なのであと15分は戻りません」

 と答えた。

「ハアーッ? こっちは急いでいるのにたばこ休憩だと?」

 B課長があきれていると、Cは、

「A係長は毎日午前10時と午後3時になるとたばこ部屋に行き、30分は戻ってきません。おかげで部下の仕事量は増えていて、これは毎日1時間仕事をサボッているのと同じじゃないかと全員から不満が出ているんです。それに私の席はA係長の隣なので、たばこ部屋から戻ってくるといつもたばこ臭くて吐きそうです」

 と訴え、

「前任だったD元課長とA係長とはたばこ部屋仲間だったので、私たちはガマンしていましたがもう限界です。B課長からA係長に注意してもらえませんか?」

 と付け加えた。

たばこを吸うために1日1時間離席
仕事をサボっていることにならないか?

 Cの話を聞いたB課長は、たばこ部屋から戻ってきたAを見つけると自席に呼び、書類内容の確認を終えてから尋ねた。

「A君は、毎日午前と午後30分ずつ離席してたばこ部屋に行っているそうだね」
「はい」

 Aは悪びれることなく答えた。その態度にB課長は不機嫌になった。

「たばこを吸うために毎日1時間も部屋を離れるのは、仕事をサボッていることにならないか? そんな状態では君の仕事にも影響が出るだろうし、他の課員も迷惑だよ。事実今、私だって君が見つからないので困っていたしね」