B課長からそう指摘されると、Aは言い返した。

「サボリなんてとんでもない! たばこ休憩で頭がリフレッシュできて、むしろ仕事がはかどりますよ。それに仲間同士、お互いの仕事に関する情報交換もしています」

 そして、口調はさらにヒートアップした。

「B課長は私ばかりを注意していますが、課員の中には仕事中毎日10回ぐらいトイレに立つ人や自席でコーヒーばっかり飲んでいる人がいます。それはいいんですか? 私は基本、トイレは昼休みに1回だけですし、自席ではコーヒーどころか何も飲みません」
「トイレは生理現象だから仕方がないし、コーヒーを自席で飲んでも手を止めない限りは仕事に影響しないと思うけど」
「それはB課長の偏見です!」

 Aの攻撃に、B課長はこれ以上返す言葉がなかった。周りの社員たちは2人のやりとりを固唾をのんで見守り、その様子は「B課長、がんばって!」と言っているようにも見えた。

たばこ部屋メンバーへの苦情は
他の部署でも上がっていた

 課員たちの視線を感じたB課長は、次の日の管理職会議でD元課長が欠席していたのを確認すると、ここぞとばかりにたばこ部屋の件を問題提起してみた。そこで分かったことは、他の部署でも、たばこ部屋のメンバーに対してAの件と同じような苦情が複数あり、それを聞いた管理職が対応に苦慮しているとのことだった。

 皆の話を聞いたE社長は、

「サボリの件も問題だが、何より社内環境が原因で社員の健康を損なうようなことがあってはならない。特に受動喫煙に関しては対策が必要だ。そこでこの際、たばこ部屋を廃止して、工場を含む会社の敷地内を全面禁煙としたいが、どうかな?」

 と提案し、全員一致で賛成、可決された。

 次の日の朝、B課長は再びAを呼び、

「昨日の管理職会議で会社内はすべて禁煙になることが決まり、たばこ部屋もなくなるよ。君は部屋の愛用者だから先に伝えておくね」

 と言った。