中学受験の世界でも、早く始めないと間に合わないと焦る方がいますが、カリスマ家庭教師の方も、本当に頑張らないといけないときに伸び切ったゴムになって挫折する子をたくさん見てきたと言います。

 早期教育の効果を謳う情報が多く、何もしないと手遅れになってしまうのではと焦ってしまう方もいると思いますが、余白がなければ、子どもが自分で何かを「探究しよう」と思う余裕も生まれません。いったん立ち止まってみてください。

【共通点3】子どものやることを否定せず、見守る

 3つ目、探究力がある人に共通しているのは、「親に自分がやろうとしていることを否定されなかった」ということです。取材した方々は皆さん、親への感謝を口にします。好きなこと、やりたいことを見つけて形にしていくまでには、どの人も失敗や挫折の経験があり、試行錯誤をしているのですが、親御さんは、子どもの試行錯誤を見守り応援していました。

 小学生から一人で開発途上国を何度も訪れ、「困っている人の力になりたい」と、国際的に活躍できる医師を目指してスイスの高校に留学中の飯嶋帆乃花さんの親もそうでした。

 帆乃花さんが、初めて一人で海外に行ったのはなんと小学校4年生のとき。たまたまテレビで、ベトナムの枯葉剤の被害者である「ベトちゃんドクちゃん」のことを見て、「どうしても現地に行きたい」と自分で旅行会社を訪れてどうすれば行けるか相談し、事後報告で「ベトちゃんドクちゃんの病院や孤児院を回りたい」と両親を説得しました。これには、さすがのお母さんもびっくりしたそうですが、子どもの真剣な思いを否定できないので、現地の知人に受け入れを頼んで一人で行かせたそうです。

 その後、マレーシア・ラオス・カンボジアなど東南アジアの発展途上国を中心に何度となく訪れます。中でもカンボジアは、中学3年間で10回以上訪れました。そのきっかけは、中1で参加した塾主催のサマースクールでした。カンボジアの魅力にハマり、その後、訪れた電気・ガス・水道がない「チョンボック村」が大好きになって、一人で何度も訪れるようになります。

 当時を振り返ってお母さんは、「小さい頃から、『失敗はすればいい』と教えてきましたし、サマースクールの記録動画で、嬉しそうな顔をして活動をしている様子を見て、子どもがやりたいという気持ちを大事にして、応援しようと思いました。今はどこにいてもネットでつながりますし、そもそも子どもは親の所有物ではありませんので、子どもの可能性を閉ざしてしまうのはもったいないと思います」と話してくれました。