1970年に創業した日本最古のハンバーガーチェーン「ドムドムハンバーガー」をご存じだろうか。最盛期の1990年代には全国で400近い店舗を数えた。しかし徐々に店舗を減らし、現在は27店舗しかない「絶滅危惧種」である。しかし2018年にある女性が社長に就任してから、ドムドムは静かに変わりつつある。イベントに参加すれば即日完売、コラボ商品を販売すれば大人気、そして2019年に発売した「丸ごと!!カニバーガー」は大評判となり、売上に貢献。ついに2020年度の決算で、ドムドムハンバーガーは黒字化を達成した。コロナ禍で飲食業が苦しい時代であることを考えると快挙だ。藤﨑社長はどうやって組織を立て直したのか? 7月6日発行の『ドムドムの逆襲』(ダイヤモンド社)からそのヒントを学ぼう。

「愛されるブランド」の作り方Photo: Adobe Stock

次々と生まれたユニークなコラボ企画

2020年にネットメディア『TABI LABO』さんにシリーズ企画を連載していただいて、その記事の総決算として、東京・池尻大橋で2月に1日限定イベントを開催しました。

前日から雨の予報。客足が鈍ることを心配していました。それでもお客様が寒い中並ぶことを想定して、使い捨てカイロを用意し当日を迎えました。

寒い雨の中、11時のオープンなのに9時から行列ができるような大盛況で、完売メニュー続出。ここまで盛り上がるとは予測していなかったので、びっくりしました。近辺にはドムドムのショップはありませんから、久しぶりに食べる方、そして初めて食べる方も多かったようです。

イベントの準備は、通常の業務にプラスされるいわゆる“差し込み案件”です。備品や食材の準備・設営、なれない場所での調理等、大変でした。でもドムドムの味を楽しんでくださる皆さんの笑顔と、『FRAPBOIS』さんのTシャツとキャップを着て新しいことに楽しくチャレンジしているスタッフの姿に、やってよかったという思いでいっぱいでした。

このようなイベントに参加するたびに「うちってこういうブランドなんだな」とわかってきたように感じました。その時の反応を目の当たりにして、お客様がどんなことを面白いと思ってくださるのか、何を求めているのかが見えてくるのです。

ユニークなバーガーを発売するたびに、それを面白がっていただいて、反響があって。このブランドが持つ底知れぬポテンシャルを感じます。

現在、新たなコラボ企画が進行中です。これも先方からお話をいただきました。バッグからステッカーまでいろいろなグッズを販売する予定で、私も毎回、楽しみながら打ち合わせをしています。約30種類のアイテムでコーナーを作っていただき、販売する予定です。

近々リリースしますので楽しみにしていてくださいね。

今までの50年、これからの50年

少しずつですが、業績が上がってきて、2020年1店、2021年3店(予定)と新店の開業も再開し、ドムドムハンバーガーが新たなフェーズに移ったと感じています。

私も兼任していたSV職を自ら離れて、2020年3月より代表取締役専任となりました。代表就任後、約1年半かけて、どのようにブランドを作り上げていけば良いのか自問自答を繰り返し、考えがまとまった時点で専任になりました。

一番に思ったのは「今まで50年ブランドを守ってきてくれた方々、そして今ドムドムをなんとかしようと応援してくれる方々によって、ブランドは守られ、作られている」ということでした。

企業がブランドを「こう売り出します」と打ち出していくことは、ビジネスの理想形としては正しいのかもしれません。でもドムドムハンバーガーには、お仕着せの方法で、事業構築のマニュアル通りにブランドづくりをすることはできないと感じました。

皆さんが守り作ってくださったブランドだからです。

スタッフだけではなく、お客様も含めて、その人生に寄り添うような形でブランドづくりをしていきたい。そして今までの50年間つないでいただいたものを、この先の50年につないでいきたいと思ったのです。

ドムドムハンバーガーはオレンジフードコートさんより譲り受けたブランドです。オレンジフードコートさんはドムドムとディッパーダンという2つのブランドを持っていました。でもドムドムは、手放されました。

ドムドムは企業にとって必要のないものとされてしまいましたが、今こうしてイベントなどをすると「ドムドム頑張れ」と応援してくださる人がたくさんいます。

そうです。ドムドムはお客様に愛されているブランドなのです。

参考記事
常識を超越した「丸ごと!!カニバーガー」
大ヒットの舞台裏

「丸ごと!!カニバーガー」誕生前夜の伝説