1970年に創業した日本最古のハンバーガーチェーン「ドムドムハンバーガー」をご存じだろうか。最盛期の1990年代には全国で400近い店舗を数えた。しかし徐々に店舗を減らし、現在は27店舗しかない「絶滅危惧種」である。しかし2018年にある女性が社長に就任してから、ドムドムは静かに変わりつつある。イベントに参加すれば即日完売、コラボ商品を販売すれば大人気、そして2019年に発売した「丸ごと!!カニバーガー」は大評判となり、売上に貢献。ついに2020年度の決算で、ドムドムハンバーガーは黒字化を達成した。コロナ禍で飲食業が苦しい時代であることを考えると快挙だ。藤﨑社長はどうやって組織を立て直したのか? 7月6日発行の『ドムドムの逆襲』(ダイヤモンド社)からそのヒントを学ぼう。

コロナ禍でドムドムから<br />登場した意外なヒット商品

スタッフのために作ったマスクを販売したら大ヒット

2020年はマスクも広く話題にしていただきました。もともとは、従業員を守りたいという一心から始まりました。

2020年は創業50周年を迎えてイベント参加を2つ予定していました。4月の『ニコニコ超会議』と5月の『浅草花やしき』さんとのコラボイベントです(その後、どちらも開催内容変更または中止で参加せず)。

そこでイベント会場などで、記念グッズを販売しようと企画し、打ち合わせのために浅草のグッズ製作会社を訪れました。すでに新型コロナウイルスが日本で流行り始めていて、担当の方が、自社のタグがついたマスクをしていらしたんです。見た途端「それ良いですね! うちのも作ってください」とお願いしたのです。

というのも、緊急事態宣言下で休業するショップも多いなか、ドムドムハンバーガーはスーパーマーケット内のテナントも多く、大部分が営業を続けていたのです。当時は日本中でマスクが不足している状況。会社としてスタッフを守るのは最重要事項です。とりあえず各店舗に布マスクを配布していましたが、毎日使うものなので、さらに送る必要がありました。

話は即まとまって、5月中旬に、各店舗にどむぞうくんのマークの入ったマスクを配布しました。そして当時品薄だったマスクをお客様にもお分けしようと、若干数をレジ横で1枚350円で販売したのです。

コロナ禍でドムドムから<br />登場した意外なヒット商品

実は赤字価格でしたが、お客様にマスクをしていただくことは、結果的に従業員を守ることでもあります。社会貢献の意味もあって価格を決めました。従業員のためにしたことなので、新商品扱いはせずに特に告知はしませんでした。

でも販売初日に購入いただいたお客様が、「かわいい!」とツイッターに投稿。すごい速さで拡散され、「いいね!」が5万5000ほど付いて、店舗に人が押し寄せてしまったのです。時短営業や、スタッフを減らして営業していた店舗は対応しきれず、混乱が生じました。

私はその様子を見て、即、販売の中止を決定しました。感染予防のためのマスクを販売したことで店舗が密になっては本末転倒です。

急いでECショップの企画を立ち上げ、10日後にはサイトをオープンしました。すると品不足のなかやっとの思いで用意したマスクは、たった1分で完売してしまったのです。

その後、マスクは別の素材のものなども開発して、現在も生産が追いつかないほどの大ヒット商品となりました。おかげさまで、計15万枚ほど出ています。

参考記事
「愛されるブランド」の作り方
常識を超越した「丸ごと!!カニバーガー」
大ヒットの舞台裏