表面的な損得にとらわれると
前に進めなくなる

 投資を始める際に、あえて教えていない重要なことがいくつかあります。そのひとつが税金です。米国株に投資をして仮に2000万円ぐらいに資産が増えたとします。実際にそれを換金すると税金がかかります。将来どうなるかは別にして、今の制度のままなら米国株投資の場合、利益のだいたい20%が税金で持っていかれるはずです(配当分は30%)。

 これを説明すると、「え、それって損じゃない?」というわけです。

「いやいや、お金がもうかった後の心配でしょ?それは」と私は思うのですが、やっぱりみんなそこは気になるようです。そもそも、普通に年収2000万円もうけたら所得税だってもっとかかります。だから、投資で得られた利益に対して税金が発生することなんか、本当はどうでもいいというのが私の本音のスタンスです。

 実はこの「教えない」ということは、教える側の私としては地味に重要なのです。本当はNISAを利用して税金を抑える方法とか、米ドルに換える際の手数料を4銭に抑える方法とか、米国株を注文する際に手数料を低くする方法とかがあって、自分はそれをきちんとやっています。しかしそれを教えると、教えられた側はやることが増えてしまって、結局スタートできなくなります。

 NISAを教えると、「えー米国株だとNISAでも配当金に10%税金が取られるけど、日本株なら税金ゼロでしょ。日本株がいいなあ」とか言い出します。

「いやいや、日本がダメになってセーフティーネットがアテにならなくなった未来のための老後資金なんだから、日本経済に賭けちゃだめでしょ」

 と言い返すのですが、いったん思考がこうなると、日本株のほうがよく見えてくる。

 NISAを教えない理由はもう一つあって、適用期間が5年なので6年目にどうしていいかわからなくなってしまうのです。だったらiDeCoを教えればいいかというとそうでもなくて、60歳まで引き出せないため不安定な生活で入院しなければならないような事態が発生した時に換金できない。

 もちろん私も、いずれこういった次のレベルの知識を教えます。教えますけれどもステップとしては最初は教えないほうが初心者は前に進むことができます。