アップル・デイリーの創設者は
「外国勢力との結託」容疑で拘束されたまま

 国家安全法はもともと、アップル・デイリーやその創設者であるビジネスマン黎智英(ジミー・ライ)、さらに頑固な民主派、そして中国を敵視する若い世代らをその直接の適用対象にして制定されたといわれている。

 実際にライは昨年真っ先に国家安全法の「国家安全を損なう外国勢力との結託」容疑で逮捕されて今も拘束されている。いまだに正式に公判が始まっておらず、一体彼がどう具体的に「外国勢力と結託」したのかは分からないままだ。そして、今年4月と5月には、別件の2019年における違法集会罪と違法デモ罪で合わせて懲役20カ月の有罪判決が下り、服役中となっている。

 一方、ライの国家安全法違反の罪状が明らかにされないまま、今年5月には香港保安局(日本の公安委員会に相当)が「国家安全法に照らし」て、ライの個人資産口座3つを凍結した。具体的な罪状すら明らかになっていない容疑者の資産を凍結した前例はなく、その根拠を巡り、法律関係者からも異論の声が出た。しかし、保安局は「国家安全法に触れる容疑についてはその詳細公開は義務付けられていない」とその根拠を明らかにせず、施行以来懸念され続けてきた国家安全法執行の「闇」が次第に水面上に浮かび上がってきた。