韓国で120万部のミリオンセラーとなった話題書がある。『どうかご自愛ください ~精神科医が教える自尊感情回復レッスン』というタイトルの本だ。精神科医である著者が「自尊感情(≒自己肯定感)」の回復法を指南した一冊である。「些細な事を気にしすぎる」「パートナーとの喧嘩が絶えない」「すぐに人と比べて落ち込む」「やる気が出ない」「ゆううつ感に悩んでいる」など、人々が抱える悩みのほとんどは自尊感情の低下が原因だと本書は伝えている。そして、その回復法を教えてくれる。
本書の日本版が、ついに7月13日に刊行となる。その刊行を記念して、本書の一部を特別に紹介する。今回は、「自尊感情の観点から、自信過剰な子どもにどう対応すべきか」について触れた内容を紹介していこう。

「ぼくもできる!」「わたしが一番!」自信過剰な子に対して、親が絶対にやってはいけない対応とは?Photo: Adobe Stock

5才くらいの子どもに見られる「万能感」とは?

 劣等感の真逆の感情に「万能感(全能感)」という感情があります。子どもは5才くらいになると親の言うことを聞かなくなりますが、この時期の子どもは劣等感とは真逆の万能感で武装しています。自分は何でもできる、人より優れていると考え、大人ができることは自分もできると言って意地を張るなど、自分が万能な存在だという考えが著しく発達する時期です。

 ヒーローアニメの真似をしてみたり、自分は世界で一番歌がうまいと自慢したり、友達に命令したり、しょっちゅう喧嘩したりするのもこの時期の子どもたちに見られる特徴です。

 子どもの成長過程の1つであり、大事な時期ではありますが、親にとってはストレスも多く、不安を感じることもあるでしょう。「自己中心的な性格の子どもがまわりから浮きはしないか」「うぬぼれすぎて、将来、現実にぶつかったときに大きく挫折したりしないか」という心配が後を絶ちません。

子どもの自信過剰をむやみに打ち砕いてはいけない

 そこで親は、早めに挫折を味わわせて、世の中は厳しいものだと教え込むべきだと考えます。しかし、ここで万能感をむやみに打ち砕いたりすると、あとあと子どもの心に大きな傷を残しかねません。自分の限界を思い知らされた体験と、それに伴う失望が強く結びつくためです。それ以降、限界を感じるたびに感情反応が過剰に起こるようになります。

 万能感が芽生える時期は、いわゆる“三つ子の魂百まで”の時期でもあります。したがって、このときの楽しかった出来事やつらい体験、おいしかった料理の味などは一生の記憶として残るのです。そんな大事な時期であるだけに、万能感が打ち砕かれたときも、その痛みが一生残ってしまいます。

「なぜ幼い子どもに冷たい現実を突きつけたのか?」と親への逆恨みや心の傷が一生付きまといもします。そのうえ、「やはり自分は大した人間じゃなかった。うかつに自信を見せたらいじめられるかもしれない」と自分を無理に押さえこみ、頼まれもしないのに下手に出たりするようになるのです。

(本原稿は、ユン・ホンギュン著、岡崎暢子訳『どうかご自愛ください』からの抜粋です)

ユン・ホンギュン
自尊感情専門家、ユン・ホンギュン精神健康医学科医院院長
中央大学校医科大学を卒業し、同大学医科大学院で博士課程を修了。京郷新聞、韓国日報、月刊生老病死などへの寄稿のほか、FMラジオ交通放送「耳で聞く処方箋」などの相談医としても活躍。韓国依存精神医学会、韓国賭博問題管理センター、中央大学ゲーム過没入センター、性依存心理治療協会、校内暴力防止のための100人の精神科医師会などで活動。主に関心を寄せている分野は「自尊感情」と「依存」。初の著書『どうかご自愛ください ~精神科医が教える「自尊感情」回復レッスン』が韓国で120万部のミリオンセラーに。