福島第一原子力発電所事故以降、各地にばらまかれた放射性物質によって、さまざまな労働現場が放射線被曝を強いられる事態になっているといわれる。そうした知られざる被曝労働の1つ、焼却炉に設置されるサイレンサ(消音器)の修理で、設備内に残留する放射性物質による被曝の可能性がいっさい知らされていないとの下請け業者の告発を紹介した。今回は消音器修理における被曝実態について明らかにする。

飛び散る放射性粉じん

 前回の記事で紹介したように、焼却灰まみれの消音器は修理のために自治体の下水汚泥焼却施設から取り外され、取材に応じてくれた会社社長の元に送られてきた。その社長によると、発注者である自治体や工事を請け負った元請け企業らから、付着物に「何が含まれているかを知らされたことは一度もない」という。

 放射性物質の含有の可能性はおろか、多量の付着物が焼却灰であることすら知らされていなかったというから、ひどい話である。

 消音器が設置されていた焼却炉の集じん装置で捕集された焼却灰からは、1キロあたり数千ベクレル単位の放射性セシウムが現在も検出されている。焼却炉に設置された集じん装置は排ガス中の放射性物質を選択的に除去できるものではないし、排ガス中の粉じんのすべてを取り除けるものでもない。

 いくら集じん装置によって「きれいになったはず」の排ガスしか最後段に設置された消音器に入ってこないはず、といっても、集じん装置をくぐり抜けた焼却灰がある程度消音機に入ってくるのは当然だ。また集じん装置で取り除いた焼却灰に放射性物質が含まれている以上、集じん装置をくぐり抜けた焼却灰にも放射性物質が含まれていることは、これまた当然だろう。

 そう理論的には知っていたが、実際にあれほど大量の灰が付着していることまでは知らなかった。同様に焼却炉の構造に詳しい学者や市民団体関係者らからも驚きの声が届いた。

 では、焼却灰まみれの消音器の修理とは、具体的にどのような作業なのか。前出の会社社長はこう話す。