「D言葉」よりも「S言葉」を

 そんな時代だからこそ、プライベートでの生活やトラブルの際にも役立つのが、私が以前よりお伝えしているクレーム対応の鉄則「D言葉禁止」という考え方です。

 D言葉とは、相手の抗議や主張に対して「だから」「ですから」「だって」「でも」の言葉を使って、とっさに反論してしまうこと。クレーム対応の現場でも、初期段階で発した不用意な一言で、相手をヒートアップさせてしまうケースは多いものです。相手の話が的外れだったり、堂々巡りになったりすると、つい口にしてしまいがちですが、相手からは「上から目線」「逃げ腰」あるいは「反抗的」と思われ、クレームを激化(長期化)させてしまうことから、クレーム対応の場面では禁断のフレーズだと伝えています。

 そんなD言葉の代わりに推奨するのが「S言葉」です。「失礼しました」「承知しました」といった、相手の感情を一度受け止める傾聴のフレーズ。もし突然隣人から怒鳴り込まれたとしたら、言葉として「そうなんですね」「すみませんでした」などのフレーズで一度受け止める姿勢を見せること(受け身の対応)をお勧めします。

 S言葉は、その場で炎上させないテクニックなので、その後は、速やかに信頼できる第三者や行政機関・警察に“相談”してアドバイスを受けるとともに、相談の実績をつくっておくことが重要です。ご存じの方も多いでしょうが、行政機関や警察は1件の相談だけで事件(案件)として扱うわけではありません。相談を受けた段階では即対応できないケースがほとんどです。ましてや隣人トラブルという、事件性や緊急性が判断しにくい案件の場合は、その傾向は強くなります。

 隣人トラブルでいきなり110番通報をする人はほとんどいないと思いますが、警察に相談に乗ってもらいたい。そういうときは、所轄署や交番の窓口で顔の見える相手にまずはトラブルについて話を聞いてもらってください。警察にいる人がすべて強面というわけでもありません。相手が優しそうな人であれば比較的気楽に相談できるでしょう。こうした相談に直接出向くべきかどうか迷うときには、相談ダイヤル「#9110」を活用しましょう。