「間違いなく倒産するわよ」

 ワイゼルバーグの義理の娘で今回の起訴の重要な証人となったジェニファー・ワイゼルバーグはCNNにそう語った。疑惑に嫌気がさした顧客が次々とトランプ・オーガニゼーションとの契約を破棄しているだけでなく、長期の訴訟費用や巨額な罰金が科せられる可能性があるからだ。

 もちろんトランプも黙ってはいない。「これは極左民主党による政治的魔女狩りだ!」と猛反撃。なにしろ久しぶりにオハイオ州で数千人の熱狂的な支持者を前に「2020年の大統領選挙は不正選挙だった!俺たちは圧勝した!」とおなじみの根拠なき主張を繰り返して政治活動を本格的に再開させたばかり。その矢先に冷や水を浴びせられたから怒りが収まらない。

 このタイミングでトランプが大規模集会を再開させたのは、来年11月の中間選挙を見据えてのことだ。在任中と比べて人気は明らかに落ち目だが熱狂的な保守層の支持は底堅く、共和党内では来年の中間選挙でトランプの影響力を頼みの綱にしている議員も少なくない。

 米政治専門サイトのポリティコと調査会社モーニングコンサルトが共同で6月に実施した世論調査によると、共和党支持者のなんと3割もが、年内にトランプがホワイトハウスに戻ってくると信じているという。正気の沙汰ではないと思うのだが、20年の大統領選の結果に対する不信感とインターネットで拡散された根拠なき陰謀論がこれほどまでに浸透しているのだ。

裁判の行方を左右する
ワイゼルバーグの証言

 そんな中、トランプは2024年の大統領選出馬をほのめかすことで影響力を保ち、政治献金も積み上がっている。1日にはマスコミの注目を集めるためテキサス州のアボット知事とメキシコ国境を視察。「バイデンは我々の国を破壊している」とバイデン大統領の穏健な移民政策を批判した。

 そんな表向き強気なトランプも、今回は自身の名前を冠した一族企業と金庫番のダブル起訴で無傷ではいられないだろう。検察はすでにトランプの過去8年分の納税記録など財務資料や関係者の証言を入手している。前大統領の犯罪を裏付ける重要な証拠だ。裁判の過程で内容が公開されれば、トランプ自身が証人として法廷に召喚されるかもしれない。