民主党政権に残された時間は少ない。新聞報道では、総理は燃え尽き症候群で、あらたな課題を探しあぐねているという。

 特例公債法、一票の格差是正など自民党の力を借りなくてはどうにも決まらないという状況だが、総選挙までの残された時間で、民主党政権の信頼回復に少しでも寄与する政策は、「歳出削減」を本気で行うことである。

「ポピュリズム歳出削減」には限界

 そもそも民主党の歳出削減は、全く手つかずに終わった。08年マニフェストでは、「国の総予算207兆円を全面組み替え。税金のムダづかいと天下りを根絶。……衆院定数を80削減……(これらにより)公共事業費で1.3兆円、人件費で1.1兆円、庁費・施設費、補助金などで6.1兆円、そのほかの経費を合わせて9.1兆円の歳出削減が国の予算からできる」とされていた。

 これらが実行に移せなかった最大の原因は、民主党が、歳出削減の本質を理解していなかったことによる。

 国民が拍手喝采を送る歳出削減というのは、一部の既得権益者だけが利益を受けていて、政・官・財のスクラムの中で温存されてきたような歳出をカットすることだろう。以下、これを「ポピュリズム歳出削減」と呼ぶ。

 いまだ、政・官・財のトライアングルの中で温存されている既得権益は少なからず存在する。このような歳出を、徹底的に削減・廃止することは、政府の信頼を高めるために重要なことである。

 しかし、「ポピュリズム歳出削減」では、GDPの2倍の借金を抱え、国の一般会計で毎年40兆円を超える赤字を出してきたことへの対策としては、スズメの涙に終わってしまう。

 必要なのは「財政再建のための歳出削減」である。

「ポピュリズム歳出削減」と「財政再建のための歳出削減」との区別ができなかったところに、民主党の敗北がある。