「やりすぎ」がもたらす害、
コンビニも三菱電機も…数えきれないほどの実例

 ご存じのように、日本は世界一のコンビニ大国で、社会インフラと言ってもいいほど全国に店舗網が張り巡らされている。店舗では多種多様な商品、サービスが提供され、店員の接客も他国と比べものにならないほど丁寧である。しかし、これらの経営方針は、人口減少が急速進む日本においては「やりすぎ」として、マイナスに働いている。

 店舗が多すぎるがゆえの過当競争で、コンビニ経営の厳しさが増し、「24時間営業」「弁当の値引き販売」などをめぐって、オーナーとFC本部の対立が激化している。また、店員もかつてよりやらなくてはいけない仕事が劇的に増え、もともと低賃金・長時間拘束というデメリットも相まって深刻な人手不足を起こしている。つまり、これまでは成長の原動力だった拡大路線やドミナント戦略(同じ地域に同じチェーン店舗を集中出店する戦略)が時代の変化で、「やりすぎ」となったことで、コンビニチェーンというビジネスモデルを根底から揺るがしているのだ。

 また、「酒提供をめぐる圧力」と同様に、「やりすぎ」が不正を招くパターンも実は多い。

 例えば、数年前から日本を代表する「ものづくり企業」で相次いで発覚し、最近も三菱電機で35年以上も続いていたことが明らかになった「検査不正」だ。

 高品質をうたう日本では、それを担保するように、他国よりも厳しい品質チェツクを義務付けてきた。しかし、それは実際に現場でものをつくっている人々たちからすれば「やりすぎ」だった。だから、建前としてはルールを守りつつ、実際は自分たちが効率良く仕事ができるような「マイルール」で検査をしていたのだ。つまり、本質的なところで言えば、検査不正というのは「過剰な品質チェック」が呼び水になっている。

 他にも近年で、致命的なダメージを受けた組織を思い浮かべていただきたい。

 東芝、日本郵便、レオパレス21…不正内容の細かな違いはあるが、つきつめていけば、「過剰なノルマ」が影響している。事業やインフラ拡大という「やりすぎ」の尻拭いが現場に押し付けられ、不正行為を誘発しているのだ。

 最近の菅政権の迷走ぶりを見ていると、このような「やりすぎ」が引き起こす「負けパターン」にどっぷりとハマってしまったように見えてしまう。

 と言うと、「何をやりすぎだというのだ、むしろコロナ対策などぜんぜんやってないじゃないか」という声が飛んできそうだ。しかし、この1年、ハタから見ていて「ちょっとやりすぎじゃないですかね」と心配してしまうものがある。

 それは、「過剰な医師会擁護」だ。