Aさん一家の現在の収入は「夫・年900万円、Aさん・年600万円」と書かれていますが、税引前なのか手取りなのかの記載がありません。ただ、月間の支出が約125万円とあることから、収入は手取額と判断して試算します。

 支出の約125万円には、国民年金、国民健康保険、所得税や住民税などの非消費支出が含まれています。おそらく、普段はあまり家計簿をつけておらず、この相談に申し込むために急遽支出項目を整理したのではないでしょうか。

 やや厳しいことをいえば、家計収支を見直す際に最初に行うのは、支出の内訳を把握すること。Aさんもまずは、きちっと支出は把握するようにしましょう。ここでは記載されていた数字で試算を続けますが、Aさんが支出の把握と並行して行わなければならないのは、貯蓄の取り崩しを止めることです。言い換えれば、家計収支を赤字にしないことを目指しましょう。

 なぜなら、現在、貯蓄は300万円しかありません。収入は多いものの、万が一減ったり、今の支出が継続すれば早晩貯蓄は底を尽く可能性が高いからです。さらに、長男は現在高校2年生ですので、大学進学費用の発生時期が近づいています。その3年後には次男の大学費用が発生というように、普段のキャッシュフローでは賄うことができない複数のライフイベントも存在します。

 3人の子どもの進路はわかりませんが、今回は1人あたりの大学費用を500万円としておきましょう。全額を貯蓄から支払うわけではありませんが、相応の準備しなければなりません。相談文には、築10年の家を2500万円で販売予定と書かれています。おそらく、家が売れれば教育費は大丈夫と思っているのではないでしょうか。

 確かに、家が売れれば教育費をカバーできるでしょうが、家は株式などと異なり、流動性が低い資産です。売れるまでに数カ月、あるいは数年かかることもありえることから、やはり貯蓄の準備もしておくべきでしょう。教育費として使用しなかった分はご夫婦の老後資金に回すことができるのですから…。