世界で日本の工作機械争奪戦!?

 1~6月期の工作機械受注を見ると、外需・内需ともに産業用のロボットや数値制御工作機械、生産施設内での機器の動作制御などを行うサーボモーターなど、わが国の精密な制御装置や工作機械への需要が高まっている。

 外需を地域ごとに見ると、2020年後半以降に中国の需要は回復し、秋口以降は需要拡大ペースが勢いづいた。ただし、中国の公共事業などが前倒しで実施されたため、21年4月以降の中国の設備投資には息切れ感が出始め、工作機械受注の伸びは鈍化している。それを補うかのように、欧米からの需要が伸びている。データを見ると、世界各国がわが国の工作機械を争奪する状況が出現したように映る。

 世界の景気循環を振り返ると、リーマンショックなど世界経済が落ち込む、あるいは減速した後、わが国の工作機械メーカーは中国などの需要を取り込んで成長した。同じことが足元でも起きている。過去と異なるのは、世界経済のデジタル化が加速し、IT関連機器の需要が一段と増していることだ。自動車の電動化や脱炭素も進んでいる。

 つまり、世界の企業が新しいモノを生み出すために、わが国の精密な機械技術が欠かせない。模倣困難なすり合わせ技術を磨いてきたことが、ファナックなど本邦工作機械メーカーのコア・コンピタンスだ。

 特に、中国市場での本邦企業の存在感は注目に値する。17年、中国の家電大手である美的集団は独クーカを買収し、ロボット技術の移転を目指した。その一方で、ファナックは中国に260億円を投じて産業用ロボットの工場を増設し、顧客向けのカスタマイズなどを行う予定だ。なお、ロボットの本体は山梨県忍野村などにある国内工場で生産する。「メイド・イン・ジャパン」は、高品質のシンボルだ。対して中国は最先端の製造技術が弱い。