需要拡大が見込まれる産業用ロボット

 世界的な半導体不足など供給のボトルネックの影響は軽視できないが、中長期的にわが国工作機械への需要は増える可能性が高い。その中でも、産業用ロボットの重要性は一段と増すだろう。

 ロボットに注目する理由は、世界のデジタル技術の開発と実用化、それにロボットの「結合」が強くなっているからだ。クラウドコンピューティングや5G、さらに高速な通信技術の実用化によって世界の工場にはより多くのロボットが導入され、スマートフォンなどのITデバイスを用いた操作や生産管理が増えるだろう。それはIoT(インターネット・オブ・シングス)の代表的な領域だ。

 その中で注目したいのがファナックの取り組みである。ファナックは現実のモノづくり(生産の現場)とデジタル技術を結合させ、顧客企業の効率性向上に資する機器や、実現したいと思う生産ラインや機器のイメージをデジタル空間で再現するサービスの創出に取り組んでいる。16年にファナックは米国の半導体大手企業であるエヌビディアと提携し、AI(人工知能)を搭載した産業用ロボットの開発に取り組み、より精緻かつ効率的な生産活動を実現しようとしている。

 さらに、ファナックは仮想現実(バーチャル・リアリティー)の技術を用いた生産システムの確立を目指している。具体的には、生産ラインをパソコン上で再現し、シミュレーションの実施を容易にして生産体制の確立に必要なリードタイムを短縮化する狙いがある。仮想現実技術は顧客の要望に応じたロボットの部品や機械の開発の迅速化にもつながる。

 つまり、ファナックの競争力の根底には、最先端の理論と既存の工作技術の結合によって新しい生産のあり方を目指すスピリットがある。それは、ファナックが顧客との信頼関係を強化し、より多くの、新しい生産技術への需要を取り込む重要な要素だ。