中国はキャッチアップしてくる
欧米は自国の製品を導入する可能性も

 ファナック以外の国内外の工作機械メーカーも、デジタル技術の積極的な活用によって世界のFA関連(工場自動化)の需要をより多く取り込もうとしている。

 今後、世界の生産活動のデジタル化は加速し、より高度(精密、繊細、迅速、効率的)な工作技術の重要性は増す。「量子技術」を用いることによってより軽量で耐久性の高い素材が開発され、それを用いた産業用ロボットや関連部品などを生み出すことの重要性も増すだろう。長期的に考えると、現時点で最先端の製造技術に弱い中国の工作機械メーカーは、産業補助金や海外企業からの技術移転を加速することによって、徐々に技術面でのキャッチアップを目指すだろう。また、米国や欧州各国は経済安全保障の観点から自国企業の製品導入を一段と重視する可能性が高い。

 そうした変化にファナックなどが対応するためには、モノづくり文化の向上と、最先端のデジタル技術の積極的な活用を進めなければならない。前者に関しては、これまでに各社が蓄積してきた精緻なすり合わせ技術に磨きをかけるために、社内の研究・開発体制の強化や社外との連携の重要性が増す。そうして得られた新しい工作技術の有用性をデジタル空間で再現したりカスタマイズしたりすることは、顧客企業の創造力を刺激し、高めることになるだろう。

 反対に、そうした取り組みが海外のライバル企業に遅れる、あるいは難しくなると、わが国工作機械メーカーが競争力を高め、世界的なシェアを獲得することは難しくなる。製造業と非製造業でわが国経済の二極化は鮮明だ。製造業の強さの象徴というべき工作機械関連技術の向上、イノベーションを目指した各社の取り組み強化は、わが国経済の安定と成長に欠かせない。