スケジュール的には、9月末が自民党総裁の任期満了で、10月21日が衆議院議員の任期満了だ。

 ワクチン接種の進行を考えると、10月21日に解散して総選挙の投票日を11月に持ち込むのが与党にとっては有利だ。総裁選挙を先送りして総選挙に臨む展開が考えられる。しかし、その前に総裁選を行って「党の看板」を替える方がいいという展開になる可能性もある。こうした「菅下ろし」が生じるか否かには、東京オリンピックが無事に運営できるかどうかが大きく関わりそうだ。

株式市場の「心配事」
2つの巨大リスクとは?

 新型コロナのデルタ株は株式市場にとっても手強い。7月19日の米ニューヨーク市場の株価(ダウ工業株30種平均)は大幅下落。前日比725ドル安は9カ月ぶりの下げ幅だった。これは、デルタ株による感染再拡大の悪影響を嫌気したものだと解釈されている。また、日本の株価の相対的な出遅れには、ワクチンの接種が海外先進国に遅れている「ワクチンラグ」の下で、デルタ株による感染が拡大している状況が関係している。

 加えて、今後、菅政権が揺らぐことが日本の株価に対してネガティブに働くリスクを考える必要が出てきた。

 菅首相が交代に至るケースは、(1)総選挙前の総裁選で敗れる、(2)総選挙で大幅に議席を減らして責任を取って退陣する、といった状況だろう。ただ支持率を考えると、あと一つか二つのミスや不運で十分起こり得ると考えておく必要がある。

 その場合に問題になるのは、誰が菅首相の後任者になるのかだ。株式市場としては、後任者が(A)緊縮的な財政政策を採るリスクと、(B)2023年の日本銀行の正副総裁の交代人事で金融緩和に積極的でない人物を指名するリスク、という二つの大きなリスクについて心配しなければならない。

 過去の言動から考えて、石破茂氏、岸田文雄氏、小泉進次郎氏といった次の首相候補に名前が挙がる人たちは、いずれも(A)(B)の両方で大いに心配があると言わざるを得ない。

 特に、23年の日銀総裁人事を首相として誰がどう決定するのかという点は、日本経済の向こう10年くらいの将来に対して甚大な影響力を持っている。そのため、特に投資家は「ポスト菅」をこの点から評価する必要がある。

 投資家としては、日経平均株価が2万5000円を割ろうとも、あるいは2万円を割るようなことがあっても、じっと投資を続ける以外に現実的な選択肢はない。とはいえ、株価の大幅下落は気持ちのいいものではないので、心に覚悟が必要だ。

「オリンピックは心配だ」「菅内閣のコロナ対策には不満がある」と思いつつも、「菅内閣の退陣となると後が心配だ」という別のリスクにも気を配る必要がある。

「安心」にはほど遠い暑い夏がやって来た。