トヨタの国内販売改革が影響か
現場のコンプライアンス意識がなおざりに

 そもそも自動車販売店(ディーラー)の整備士については、かつては3K(キツい、汚い、危険)の代表職種とされたが、近年はディーラー側もアフターサービスの重視とともに整備士育成に力を入れており、業務環境が改善してきた経緯がある。

 全体として慢性的な整備士不足の状況が続いてはいるものの、トヨタ販社、特にメーカー直営の戦略ディーラーのサービス現場で不正車検が横行していた事実は、もっと根本的な問題があると言わざるを得ない。

 それは、トヨタが国内販売改革、すなわちトヨタ全販売店での扱い車種統合と販売チャネル統合を急ぐあまり、ディーラーの収益目標の重点がアフターサービス(車検や点検など)に置かれたことで、現場のコンプライアンス意識がなおざりにされた可能性があることだ。

 メーカーの佐藤本部長も「トヨタの国内流通改革の中で、台数重視や数字を追いかけることが先行していたという意味で、メーカーの責任は感じている」と、メーカーとしての責任について触れた。

 また、国内販売でトップを走るトヨタだが、佐藤本部長は「慢心があったのかほころびが出た。実際に浮かれていなかったか、正しい仕事がなされていたか(検証する)。ゼロベースでトヨタの信頼を販売店と一緒に回復させたい」とトヨタの信頼回復の徹底も強調した。

 かつて国内販売においては、「販売のトヨタ、技術の日産」という、自動車業界をリードする両大手を比較する言葉がよく使われていた。

「販売のトヨタ」とは、全国の有力地場店が地域に根ざしているトヨタ販社の営業力の強さを象徴する言葉だ。トヨタブランドで5チャネルの販売店をセットし、さらに欧米の高級車に伍するレクサスブランドを加えて、一時は6チャネルの国内販売網を形成していた。

 しかし、国内自動車市場は、右肩上がりの高度成長から循環型需要の社会に移行している。トヨタ以外の自動車メーカーが国内販売網を単一チャネルに切り替える中で、トヨタも国内販売体制の改革に踏み切ってきた。