「中国の大学が上位に入るのは時間の問題でした。実力で言えばとっくに世界トップクラスだと思います。中国政府は1990年代の『211工程』政策で百数校の重点大学を指定し、改革を促しました。『必要な支援はするが、改革のやり方については口は出さない』というような政策で、このころから海外大へ行った優秀な中国人研究者などを呼び戻し、研究力を伸ばしていきました」

 前出の清華大の指標を見ると、「国際化」は51.1と上位大学と比べると低いが、「産学連携」は100.0で世界の全大学中トップだ。

「産学連携は世界でも特に進んでいます。中国の大学は、かなり以前から校弁企業といわれる大学発ベンチャーが多く輩出しています。その後、あまりにも多種多様な産学連携が進んできたため、利益相反という視点からルール作りを急いで進めてきたくらいです。中国の改革の特徴である、実験的になんでもやってみて、必要な制度は後から整備するという成功事例のひとつです。

 国際化の評価が低いのは、留学生や外国人教員の数が少ないことが要因です。留学生向けの英語による授業や、留学先の海外大での単位を認定するダブルディグリー制など、国際交流プログラムが英語圏に比べてもまだ少ないという課題があります。私も以前、客員研究員として半年間清華大に赴任していましたが、外国人登録の手続きなど日本と同じく複雑でハードルが高いといったこともあると思います」(角南さん)

 一方、日本の大学の評価が大きく上がっていないのはなぜなのか。中国の大学で生命科学の研究を行っている日本人研究者はこう話す。

「2004年の国立大学法人化によって国の運営費交付金が減り、分野を絞って一部の研究に予算を投下する『選択と集中』政策が始まったことで、東大と京大だけはなんとかメンツを保っているという状況だと思います。主要先進国の中で、論文の数が伸び悩んでいるどころか減っているのは日本だけです。いま、アメリカの国際研究論文で共同研究者として名前が挙がるのは、断トツで中国の研究者です。日本の存在感は減っています」(在中研究者、以下同)

 日本の場合、海外に出た研究者が戻ってくるということは少ないと、前出の研究者は指摘する。そもそも日本の大学に教員のポジションがなく、帰ってきたくても来られない状況があるという。