私立中学校の受験は親子ともに準備が大変

栄光ゼミナール指導統括室・藤田利通さん栄光ゼミナール指導統括室・藤田利通さん

 中学入試では、小学4年生になる春前から塾に通い始め、受験勉強を本格化させるのが一つの常識となっている。「特に私立の受験勉強は大変ですね。何より、学校の勉強では補えない範囲で4科目をバランスよく勉強し続けなければいけません。やる気の継続という点では、多くの家庭が少なくとも一度は悩みます」(藤田さん)

 親の負担も小さくない。夜遅くまで塾で勉強する子どもに対して夕食の弁当を作ったり、週3、4回の頻度で送迎をしたり、予習復習を見てあげたりと、サポート役に徹しなければならない。

 志望校選びに関しては、学校説明会や個別相談会に参加し、教育理念などを親子そろってしっかりと把握する必要がある。校風を肌で感じるには、文化祭や学園祭に足を運ぶという事前準備も重要だ。

 それだけの時間と労力を重ねて臨む中学受験。一校も合格できない“全落ち”は避けたいところだ。合格の可能性を考えた志望校や併願校の選択も、重要な準備と言える。

選択肢が豊富な私立中学。寮のある学校も

「首都圏は特に学校数が多く、私立は選択肢が豊富です。それぞれに個性がありますし、中学から複数のコースを設けている学校もあります。受験日も異なるので、そのなかで決めた学校に進んだ子どもたちは、やはり楽しそうです」(藤田さん)

 藤田さんは、私立は運動部だけでなく、文化部も充実している学校が多く、授業外で活躍できる場がある点も特色だと話す。

 寮を完備している私立中高一貫校も少なくない。全国を対象に学校選びができる点は、私立受験のメリットの一つと言えるだろう。

異動が原則ない私立の教員は愛校心と連携が強い

 栗原さんによると、私立の教員は原則として異動がないため、愛校心が強いうえ、固い仲間意識を持っており、何かしらの問題に直面した際に乗り越える総合力やスピード感があるという。

「私立は採用に関しても学校に裁量がありますし、優秀な人材が集まりやすいと言えます。若いうちに採用され、『定年退職まで教えます』という覚悟を持っている教員が指導をするので、授業の質は必然的に高くなります」(栗原さん)。教員たちの知見の蓄積が伝統の深化につながったり、人材育成を促したりする一面もあるという。

(文/菅野浩二)

【話を聞いた人】
成城中学校・高等学校前校長 栗原卯田子さん
都立高校の教頭、校長を歴任したあと、都立中高一貫校の改編に携わる。都立小石川中等教育学校の校長を6年間、私立成城中学校・高等学校の校長を8年間務めた。

栄光ゼミナール指導統括室 藤田利通さん
指導歴30年。中学入試の理科を指導し、御三家中の入試対策ゼミを20年以上担当。2018年から栄光ゼミナール中学入試責任者を務める。

『偏差値だけに頼らない 中高一貫校選び2022』より

AERA dot.より転載