なぜ猫家具を買ってしまうのか

 テレビボードといった家具は、廉価でもそこそこのクオリティーのものが手に入る。最近は不用品交換サイト「ジモティー」などを活用すれば中古ではあるものの立派な一品がタダで手に入ったりするから、小市民の筆者はそこにあまりお金をかけなくてもいいと思っていた。であるからキャットタワー型テレビボード5万円の初見の印象は、先述の通り「買うわけない」であった。
 
 しかし、猫を飼っている・飼ったことのある方なら共感いただけると思うが、猫はこちらの意に添ってくれることが少ない。だから何かの折に、こちらの思惑通りに満足げな様子を見せてくれるのがたまらなくうれしく感じられる。ネットに出回っている有名な画像に、買ってきたおもちゃには見向きもせずおもちゃの入っていた箱に入って落ち着く猫の様子を写したものがあるが、あれこそが猫の生態であり、だからなおさら飼い主たちは猫の心をつかもうと躍起になるのである。

 筆者が身の丈に合わぬ5万円の買い物をしたのもこの「なんとかして猫様にご満足いただきたい」という気持ちが高じた結果だ。猫用テレビボードの存在を知ってから欲しい気持ちが日に日に膨らんでいき、ついに爆発するに至った。猫家具は、飼っている人の心を徐々につかんでいくという特性を備えているようである。

“猫家具”の分野は比較的新しく開発され始めたので、今後もさらに種々の製品が登場するだろう。飼い主にとっては大変喜ばしいような、思わぬ買い物をつい強いられてしまうような、悩ましいところだが、当の主役である猫様の生活が向上することが最優先事項であるから、やはり歓迎すべき流れに違いない。我々人類はどこまでいっても猫様の下僕であり、またその役割に幸福を見いだす心の余裕を備えた、豊かな生き物である。