管理職の基本的な役割は、大きく分けると(1)仕事のマネジメント(チームとして成果を出す)、(2)人のマネジメント(人を巻き込んで、育てる)の2つである。一担当者と管理職の仕事の違いは、「チーム」「部下」が関わってくることである。部下を育てたりフォローしたりすることは、管理職の大事な仕事である。

 管理職になってマインド面で苦労するのは、「手放す」ことである。役割の変化によって、大切なことは変わってくる。一担当者時代に「ベスト」であった仕事の進め方や自分の成果にこだわること、短期的な見方をすること。管理職になったら、これらを手放す努力をしなければならない。

◇仕事を部下に任せてみよう

 管理職になって間もない人から「任せる仕事がない」という話がよく出る。だが、「任せる仕事がない」というのは、往々にして思い込みであることが多い。自分の抱える作業の一部や影響の小さいものから任せるのなら、トライしやすいだろう。

 それでも任せられない人は、そもそも不安を感じていることが多い。本当にできるのか心配、自分でやった方が早いという気持ちになるのは、「失敗しないこと」を期待しているからである。しかし、人間は失敗するものだ。大事なのは、失敗してもすぐフォローできるようにすることだ。

 女性は特に、すべてにおいてきめ細やかに対処して進めたいという人が多い。それは長所にもなるが、チームプレーでは、任せられなかったり介入しすぎたりする恐れがある。仕事のやり方が自分と違っても、間違いとは限らない。自分基準で相手に完璧を求める習慣は今すぐ手放そう。

◇部下に仕事を依頼するときのコツ

 仕事を人に頼んで、期待通りにやり遂げてもらうことは意外と難しい。仕事を依頼するときのコツは、「仕事の全体像を伝える」ことである。ここでいう全体像とは、部下が担当する仕事の、業務全体における位置づけを意味する。たとえば、その仕事が必要となる背景や目的は何か、その仕事の成果物は誰にどう使われるのか、といった点をしっかり伝えるようにしたい。そうすれば部下の理解や習熟がスピードアップする。

 部下に仕事を依頼する際は「3段階で任せる」ことを意識するとよい。相手の業務レベルに応じて、(1)WHY(背景や目的)、(2)WHAT(完了すべきこと、成果物)、(3)HOW(作業内容や作業手順)の3段階で、伝えるべき内容を決めよう。