もし部下が知識や経験が十分あり、仕事の方針も上司である自分とわかり合えているのなら、(1)だけ共有すればよい。「予算確保にあたり、部長に総工数を説明するための資料をつくってくれる?」といった具合だ。

 一方、部下が知識も経験も持たない場合は、(1)~(3)の全部についてすり合わせをした方がよい。相手の状態に応じて、伝えるべき内容や深さを考えることが必要となる。

◇部下を上手に叱る方法

「部下に嫌われるのが怖くて、叱りたくても叱れない」というケースもあるだろう。「叱る」という行為は、相手にとって耳の痛いことを伝えることである。それゆえ部下の反応が気になり、躊躇してしまう。

 そんなときは「叱る」のではなく、「フィードバックをする」と考えよう。相手の成長のために、事実ベースで伝える。そうすると、叱ることに対する精神的なハードルが下がるだろう。

 もし叱るべきかどうか迷うなら、「その行為が相手のためになるか?」と自問してみよう。相手視点に立つことで、迷いが消えて態度にブレがなくなり、部下との関係にも良い影響を及ぼすだろう。

 叱る際に必要なことを伝え、かつわだかまりが残らないようにするコツは何か。それは人と問題を切り分けることだ。「だから○○さんはダメなんだよ」ではなく、「ミスが続いているね。何が原因だろう」と伝える方が、相手も受け取りやすい。そして「私」を主語にして伝えてみよう。「私は~だと思う」という「Iメッセージ」は一意見のような伝わり方をするため、相手もぐっと受け入れやすくなる。

◆周りに振り回されない仕事術
◇自分でコントロールしている意識をもつ

 管理職になって直面する課題に、「いろいろな人や出来事に仕事を中断されて、集中できない」というものがある。部下が話しかけてくる、会議に駆り出される……。一担当者であったときと比べて関わる人数が増えるため、一人で集中する時間をもちにくい。

 すべてに対処していると、振り回されている感覚が高まり疲弊していく。この疲弊感を減らすためのポイントは、「自分で手綱を握る」スタンスを取ることだ。自分の行動はすべて自分が選んでいる。