県内の市街地、たとえば宇都宮市方面に向かうためには、目の前にできた谷中湖の中央を走る道を行くしかない。しかし道幅が狭く自動車では通れないため、回り道を強いられている。

 また、周辺には徒歩で通える栃木県の公立小学校や中学校がないため、子どもは越境して埼玉県加須市の学校に通うしかないという。

住民は加須市への編入を望むも、
事はそう簡単には運ばず

 水道の供給、電話番号の市外局番、郵便番号も埼玉県加須市である。栃木県にありながら、埼玉県加須市で暮らしているのと変わらない状態。それでいて、税金は栃木県栃木市に納め、ゴミの収集車も栃木市が派遣している。

 さすがに救急車両は栃木県からでは時間がかかるとして、いまは埼玉県から来るようになったという。

 こうした事情から、下宮地区の人々は埼玉県に生活の基盤のある埼玉県加須市への編入を望んできた。2010(平成22)年に合併の動きがあった際、要望書を栃木県県議会に提出したものの、事はそう簡単に運ばなかったようだ。

 栃木市と加須市の両市に加え、両県議会の議決が必要なこと、さらに総務省の告示も求められるなど、複雑な手続きが待ち受けていたため、当面見合わせとなったまま、いまに至っている。