米国では資産増加分の35%が
最も裕福な上位1%の層に集中

 コロナ禍は世界の変化を加速させた。その一つが格差の拡大をはじめとする経済の二極化(K字型の景気回復)だ。

 コロナ禍が発生する以前から、グローバル化によって格差は拡大した。例えば、鉄鋼などの在来産業では、先進国から労働コストの低い新興国に生産拠点が移った。その一方で1990年代以降、米国経済はIT先端分野に生産要素を再配分して経済運営の効率性を高め、経済成長を実現した。その結果として、世界全体で労働者は一握りの富裕層と、その他大多数の中・低所得層に振り分けられた。

 その上に、コロナ禍が発生し、低金利に支えられた株高が富裕層の保有資産額を押し上げた。2020年の米家計資産の変化を見ると、資産増加分の35%が最も裕福な上位1%の層に集中した。主要国の経済政策は富の偏在の一因だ。

 感染再拡大は富の偏在をさらに加速させるだろう。7月19日の米国の株式市場では、在来分野の株価下落と対照的に「フィラデルフィア半導体株指数」が上昇した。主要投資家にとって、半導体関連をはじめIT先端企業の成長期待は相対的に高く、その意味は大きい。

 現在、米国の連邦準備制度理事会(FRB)は緩和的な金融環境を維持している。その背景には、感染再拡大が労働市場を下押しするとの警戒がある。その見方が7月に入ってからの米長期金利の低下を支えた。低金利環境は続き、当面、成長期待の高いIT先端企業の株価は不安定な動きを伴いつつも高値圏を維持する可能性がある。それは、富裕層への富の偏在を強める。

 そうした変化をマクロレベルで考えると、IT先端企業が集積してきたか否かによって、各国経済の強弱はよりはっきりするはずだ。有力なIT先端企業が見当たらないわが国経済にとって、感染対策のための人流抑制の影響は大きい。感染の再拡大期間が長引けば、わが国経済にはかなりの下押し圧力がかかるだろう。