米中は自律的に成長する「太陽」
日欧はその光を反射する「月」

 逆に言えば、各国経済が感染を克服するにはワクチンや治療薬が不可欠だ。

 ただし、世界全体で考えた場合、ワクチン開発や供給がどう進むかが見通しづらい。まず、各国の接種状況が大きく異なる。接種が進んでいるワクチンが変異株に十分な効果を発揮するかも不透明だ。ワクチン供給の国際連携の進捗(しんちょく)も期待しづらい。その状況下、7月19日に英国はイングランドでの移動規制などを撤廃・緩和した。それらが世界経済に与える影響は軽視できない。ポイントは2つある。

 まず、世界経済の景気循環は変化する可能性がある。コロナ禍以前、世界経済は、先端分野を中心に米国と中国経済が成長し、それがアジア新興国の工業化や内需拡大を支え、最終的に日欧の経済が自動車や機械の輸出増加によって持ち直した。太陽と月の関係に例えれば、米中は自律的に成長する太陽の経済、日欧はその光を反射する月の経済といえる。

 しかし、感染再拡大は景気循環の関連性を弱めた。過去1年ほどのアジア経済の推移を振り返ると、中国とアセアン諸国の景気の相関性は低下している。なぜなら、中国では感染が封じ込められる一方、マレーシアやインドネシアなどで感染が深刻だからだ。感染再拡大によって人流が抑制され、個人消費や観光需要は落ち込む。それによって世界経済はまだら模様の様相を強めるだろう。

 次に、感染再拡大は鉱山開発や生産、物流を停滞させ、供給を制約する。それは企業物価を中心にインフレリスクを高める。米国のように需要が旺盛であれば企業はコストの増加分を販売価格に転嫁し、消費者物価に上昇圧力がかかりやすい。しかし、わが国のように需要が盛り上がらない経済ではコストの転嫁は難しく、製造原価などの増加が企業業績を圧迫するだろう。