本書の著者らは、PDアプローチでは「What」ではなく「How」に視点を置くべきだと強調している。私たちは、どうしてもPDが実践する、他とは異なる手法(What)に目がいってしまいがちだ。冒頭の「ばんどう」の事例でいえば「高級弁当のテークアウト」であり、ベトナムの村でいえば「エビ、カニ、青菜を取り入れた食事」がWhatだ。
だが、大事なのはそのWhatを、どのように(How)実践するかを詳細に学ぶことなのだ。高級弁当を「ファンとのつながり」を使って広める、栄養十分の食事をどのように習慣づけるかが「How」だ。Whatだけを、ポンと外部や上から与えられても、なかなか浸透しないだろう。
するべきWhatが分かったら、「なぜ」「どのように」といった問いを重ねていき、周囲とのコミュニケーションを適切に取りながら、Howを肉付けしていく。ある程度時間と手間のかかるプロセスだが、その結果として、すべきことの全体像が見えてくる。そしてこのプロセスは、実践者、問題解決の当事者自らが行わなければ意味がない。
こうしたWhatとHowの組み合わせは、さまざまな業務を的確に遂行していく上でも、応用できる考え方ではないだろうか。
コロナ対策にしても、政府や専門家が示したWhatに、自分たちで学び、考えたHowを肉付けしていくべきなのかもしれない。
(情報工場チーフ・エディター 吉川清史)