資金集めの活動が自粛
タイ「アークどこでも本読み隊」

 タイのチェンマイ県プラオ郡の図書館を拠点に活動を展開する「アークどこでも本読み隊」代表の堀内佳美さんからは、深刻な資金不足が続いているというメールが、コロナの収束が見えない2020年の暮れ頃から私に届くようになっていた。

「アークどこでも本読み隊」は2010年1月にタイに留学経験のあった本好きの堀内さんが、図書館の少ないタイの農村部の子どもたちに本を読み学ぶことの喜びを伝えたいと設立。2018年6月には、タイ国内で「ムラニティ・ノーンナンスー(本の虫財団)」という法人格も取得し、長期的に活動の幅を広げていくことを目標にしていた。堀内さんは全盲でありながらも国際的な読書啓蒙活動家として、日本のテレビ番組などで紹介されることもあり、ご存じの方も多いのではないだろうか。

「子どもの本」を通じた日本の海外交流が、存亡の危機に瀕している理由2015年にマレーシアで開催した「IBBY(国際児童図書評議会)第2回アジア・オセアニア大会」で「アークどこでも本読み隊」の活動報告をする堀内さん。アグレッシブな彼女の行動は世界からも注目された

 これまで堀内さんは、日本とタイを行き来し、講演会などを行って得る収入をはじめ、活動への理解を深めてもらうために支援者やスポンサー先に直接出向くことで資金調達を行ってきた。だが、コロナ禍での活動自粛で講演会は開催できず、またスポンサーへの協力も申し出にくい状況が続き、運営資金集めが停滞してしまったという。

「アークのための貯金はどんどん減っていき、これまで何度もしてきた自分の中に火をともして前へ進むことが、とても難しく感じます。今までは、いろいろな場所にいる人と接することでモチベーションを高めていたことがよく分かりました。私の中のともし火が、酸素不足で、今にもふっと消えてしまいそうに思うことさえありました」と堀内さん。大切にしているコミュニケーションもままならないコロナ禍によって、お金だけでなく先が見えない精神的な苦しさも彼女の心にのしかかっている。