今回の五輪はすさまじい巨額赤字を垂れ流すことが決定している。今、熱戦の舞台となっている新しい施設の多くが、有効活用の目処が立っておらず、「赤字経営」になると言われている。しかし、このような「敗戦処理」をマスコミがウヤムヤにする恐れがある。

 自分たちも「商売」で関わって、さんざん「戦争」を煽ってきたという後ろめたさがあるからだ。

 前出の半藤氏は、無謀な戦争へと突っ込んでいった日本の「昭和の教訓」として以下のような指摘をしている。

<最大の危機において日本人は抽象的な観念論を好む。それを警戒せよ>
<国際的常識の欠如に絶えず気を配るべし>
<国民的熱狂をつくってはいけない>

「人類がコロナに打ち勝った証」という「抽象的な観念」のもとで進められている今回の五輪では、開催前に女性蔑視や人権意識という「国際的常識の欠如」が浮かび上がっている。そして、マスコミは連日のメダルラッシュで「国民的熱狂」をはやしたてている。

 半藤氏にやるなと言われていることをすべてやっている印象だ。

 太平洋戦争も最初は連戦連勝で、「やっぱ戦争やってよかったなあ」の大合唱だったが、最後は悲惨な負け方になった。メダルラッシュで大勝ムードの五輪が、同じ道を辿らないことを心から祈りたい。

(ノンフィクションライター 窪田順生)