髪型を変えても、「男性を意識したヘアスタイルに変えたのね」などと嫌味を言われる始末です。今では笑い話として受け流すことができるのですが、当時はつらく受け止めていた毎日です。

 エプロンがないとサービスにも支障がでます。この時は同僚にエプロンをお借りして事なきを得ましたが、このようないじめを受けて、落ち込み涙するCAもたくさんいるのです。

 理不尽ないじめへの対処法は、まともに取り合わないことです。悔しくても、仕返ししてやろうなどとは思わず黙ってやり過ごすのです。それは泣き寝入りではなく、稚拙ないじめに対しては同じレベルになり下がらないということです。私もエプロンを隠されても、何をされても、何事もなかったかのように振る舞いました。

部下になった先輩CAに足を引っ張られる

山本洋子さん山本洋子さん 

 そして一番苦労するのが、自分の役職が上がり、先輩後輩の序列が崩れた時です。今の世の中、年功序列は崩れ、すべて順番通りに先輩から昇進するということはありません。どんな業界でも先輩であろうが、後輩であろうが、その役職に相応しくない人は昇進することはないのです。

 CAの世界でも当然起こり得る話です。6000人ほどいるCAが全員チーフパーサーになれるわけではありません。チーフパーサーは一機の長として客室の責任を任され、パイロットや地上係員と連携しお客様サービスにあたります。配下のCAの指導育成も任されます。いくらフライトの経験が豊富であっても一般のCAとは役割が違います。

 私がチーフパーサーに昇格したとき、部下にあたるCAのなかには、私より10年社歴の古い先輩を筆頭に、複数の先輩CAがいました。10年前に仕事を教えた後輩が、自分の上司になるのです。彼女達にしてみれば面白いわけがありません。

 自分の立場をわきまえた先輩が多いのですが、なかには「お手並み拝見」とばかりに難題を吹きかけてくる人もいます。

 今は機内エンターテイメントサービスが充実し、エコノミークラスでも各座席に個人用テレビが装着されていますが、私がフライトしていた頃は、個人用テレビが普及し始めた頃で、初期トラブルが頻発していました。

 画面がフリーズする、まったく作動しないなど、映画や音楽を楽しみにしていらっしゃるお客様にとっては、不満が募る状況が頻繁に起こっていました。故障は一気に起こります。一斉にコールボタンが押され、あちこちでクレームが噴出します。

 そんな時、CAは連携してお客様対応にあたるのですが、その先輩は我関せず知らん顔。他のCAがお客様にクレームされ、個人用テレビを回復させるために必死で駆けずり回っているときにも一人優雅に食事をしています。最後まで非協力的な態度で、クレーム処理はチーフの仕事だとばかりに手助けもせず、注意をしても、返事はするものの、指示通りには動いてくれません。

 同僚のCAには私の悪口を言う、私の上司には私についての告げ口するなど、やりたい放題です。さすがに精神的にも疲れ果てることが多かったのですが、相手を変えることは簡単にはできません。