レッドスターは、甘そうなパンを二つ食べ「メールで住所送るから、そこに7時に到着して」と言い、私がナビの設定をして出発するころにはイビキをかいて三度寝に入っていました。

 私は「ナポレオン睡眠は?」と心の中で思いましたが、ナビの到着時間を見ると7時ピッタリでしたので、遅れることは許されないと思い、法定速度内でできる限り急ぎました。

 渋滞していれば空いている迂(う)回路を探し、何度もナビを設定し直して最短ルートを選びながら、指定の住所に到着したのは6時58分でした。

「探偵デビュー」直前
緊張感高まるも、ある知らせに…

 到着直後に目覚めたレッドスターは、「一緒に来て」と言って車を降りたので、私は急いでついて行きました。

 レッドスターはスマホを見ながら「今回はオーソドックスな浮気調査。ここが今日の調査開始現場で…」と初現場で緊張している私に声をかけてくれました。ところが数秒黙った後に「依頼者の意向で調査予定日が今変わった。こういうこと探偵業界ではよくあるから」と言い、さっさと車の後部座席に乗り込みました。

 普通の仕事では考えられないと思いますが、仕事をする調査日=結果を出すために最も確率が高い日という発想と目的の為にこの判断は、探偵にとって合理的なのです。こうして私の初現場は先送りになりました。

 私は黙って運転席に乗り込み、今朝の集合場所だったコンビニに向かいました。

『新人の片岡』『探偵界のルール』、点と点が線になる探偵トークでした。

 次回は、実際の初現場「オーソドックスな浮気調査編」です。

※本稿は実際の事例に基づいて構成していますが、プライバシー保護のため個人名は全て仮名とし、一部を脚色しています。