トヨタが目指すモビリティー革新
地方のデジタル化や持続性向上にインパクト

 その一方、わが国では、トヨタ自動車がよりオープンな姿勢でモビリティー革命を起こそうとしている。VWと比較した場合、トヨタはかなり長期の視点で、多様な移動の選択肢を社会に提供しようとしている。

 その一つの取り組みとして、トヨタが進める商用車の電動化、コネクテッド化などを推進するための合弁事業に、軽自動車メーカーが参画したことは印象深い。その目的の一つは、経済のデジタル化によって重要性が高まった物流機能の強化だろう。「ラスト・ワン・マイル」の物流をいかに確立するかは、わが国だけでなく世界経済全体にとって重要だ。

 また、地方では軽自動車が不可欠な生活の手段になっている。軽自動車に電動化やIoTの技術を結合させることは、インターネットを介したモノやサービスの消費をより身近にするだろう。それに加えて、自動車を用いて住み慣れた場所を中心に、より効率的に医療や公共サービスにアクセスすることも可能になるだろう。つまり、自動車の機能向上が、過疎化が進む地方のデジタル化や持続性向上に与える潜在的なインパクトは大きい。

 物流拠点や居住地を中心とする一定範囲での移動を念頭に置くと、軽自動車の電動化は社会全体でのコストを抑えつつ、より効率的な物流・移動の手段として役割を発揮するだろう。そうした考えに、インド市場で100万円台のEV供給を目指すスズキの取り組みがどう結合するかは興味深い。

 わが国で新しいモビリティーが提供されることは、人口減少あるいは高齢化社会における、自動車の社会的機能を世界に示すモデルになり得る。再生可能エネルギーの利用を含め、自動運転などの先端技術を搭載した自動車を用いたインフラシステムを本邦企業が連携して開発し、国内での実用化が進めば、それを輸出して海外の需要を取り込む展開も想定される。