日本勢はオープンイノベーションで
「自動車を使った新しい生き方」を提案すべし

 ただし、EVシフトはわが国の自動車産業にとって、すり合わせ技術からユニット組み立て型へシフトする大きなゲームチェンジであり、「逆風」だ。ホンダがEV事業への取り組みを強化しているように、電動化への対応は急務だ。それと同じスピード感をもって、水素を用いた燃料電池自動車(FCV)などの普及を官民の連携によって進めることが、わが国自動車産業の競争力の発揮に欠かせない。それはわが国経済の成長力に影響する。

 他方、VWはEVに集中し、バッテリー生産能力や充電インフラシステムの強化に取り組み始めた。欧州委員会はそうした取り組みを生かして、脱炭素を支えるインフラ投資を進めて雇用の創出を目指したいだろう。それが、今回の方針表明の真意と考えられる。それは、カーボンニュートラルを重視した経済政策によって成長を実現し、国際世論における欧州の発言力向上に欠かせない。

 問題は、その姿勢に、フランスやイタリアなどの自動車メーカーが納得し、しっかりと対応できるか否かだ。それに加えて、世界的に株価に調整圧力がかかれば、VWの取り組みが遅れるリスクも否定できない。

 わが国の自動車各社に求められることは、よりオープンな姿勢でEV、FCV、さらには自動運転などの先端分野の技術開発を進め、「自動車を使った新しい生き方」の提案を急ぐことだ。そうした取り組みの加速化が、わが国が世界経済全体での自動車のゲームチェンジを主導するために欠かせない。

 本邦自動車メーカーが連携を強化しつつ、異業種企業の参画を取り込んで電動化や自動運転技術を用いたモビリティーを生み出すことができれば、安心・安全、快適性、持続性などの点で日本が世界の消費者の支持を得ることが出来るだろう。

 反対に、各社が従来のビジネスモデルや発想に固執する場合、世界経済のゲームチェンジへの対応は容易ではないだろう。今、わが国経済は重要な岐路を迎えている。