「早めに毅然と断るべき」ではあるが、難しい

 まず、今回の事案は、初見から「なんだかおかしい」と思わずにはいられないケースです。いきなり30人ほどの男女が、アポイントもないまま市長に会わせろとやって来て、警備員の制止にも従わなかったとのことですから、「問答無用に対応拒否(排除)すべきだ」と思う人も多いのではないでしょうか。

 後付けで答え合わせをすれば、確かに、こちらのお願いを聞いてくれない、拒否される場合は、職員のみならず、他の市民の危険にもつながるため、早めに対応をお断りすべきだった、というのが今回のケースの結論です。

 ニュースで文章を読むと「当たり前だろう」と思う人も多いでしょうが、現場で対応する担当者にとっては、早めに“毅然と断る”というのができそうでできないものです。

 想像してみてください。興奮した大勢の人に対し、どのように声掛けし説得すればいいのでしょうか。「こっちは市民だぞ!」などと言われたら、市役所の職員としては強く出にくいでしょう。また一般的に、抗議やデモ活動において強硬に要求や主張する人というのは、相手の言い分にはまず聞く耳を持ちません。職員が、冷静かつ穏やかな口ぶりでも、断った瞬間に激高するかもしれない……。

 実際にこうした人たちに対応するのは、ニュースを見ているだけではわからないほどの恐怖を伴う行為だと断言できます。一方的で理不尽な苦情を聞き続け、「着地点」を見いだせないまま、クレーマーと対峙しなければならない現場職員の苦労と疲弊は、想像を絶するものがあるのです。