REITの方がマシ

 不動産投資信託(REIT)という投資商品がある。株式投信と似たような商品で、プロが小口の資金を集めて不動産を購入し、賃貸料収入や売買益などを得て投資家に配当するという仕組みだ。これを持つことで、投資家は小口資金でも、投資用不動産の一部を持つのと同様の効果が得られるわけである。

 上記のように、筆者は貸家の保有をお勧めしていないので、REITについても積極的にお勧めしたいとは思わない。しかし、自分で貸家を持つよりはマシだと考えているので、貸家保有を検討している人はREITも検討してみるといいだろう。

 また住宅資金を貯めている人は、その分をREITで運用するというのが合理的かもしれない。住宅購入金額の1割が貯まったから、住宅を10分の1だけ買う、ということはできないので、貯金している間に住宅価格が上昇してしまうリスクがあるが、そうしたリスクへの備えとしてREITが使えるからだ。

 REITは株式投信と仕組み的には似ているが、大きく異なるのは、プロに頼むメリットが大きいということである。

 株式投信の最大のメリットは、小口資金で多くの銘柄に分散投資ができることであって、プロに銘柄を選んでもらうことのメリットはそれほど大きくない。上場株式が値上がりするか否かは、プロでも判断が難しいので、プロに頼む投資信託を買っても素晴らしい値上がり率が期待できるというわけでもなく、一方で結構な手数料を取られる。

 しかしREITの場合には、投資用不動産を選んで買うという作業だけでも、素人とプロとでは技量に大きな差が出る。借家人との交渉も当然、プロの方が慣れているだろうし、壁紙の張り替え等々もプロの方がスムーズだ。

 実際にはREITは、普通の個人が買えないようなオフィスビルやホテル、テーマ―パーク、一棟買いのマンションなどの物件を取得するが、入退去にまつわるもろもろの作業負担やリスクは、運営する法人や管理会社が一手に引き受けてくれる。

 さらに大きいのが、大量購入のメリットである。上場株式は1000株買っても100万株買っても同じ値段だが、ワンルームマンションを1部屋だけ買うのと1棟買うのでは当然、値段が大きく異なる。

 というわけで、自分でワンルームマンションを購入するよりも、同額の資金でREITを購入する方が、プロに任せるメリットが期待できる。加えて、売りたいときに市場で簡単に売れるし、REIT投資それ自体が多くの投資用不動産に少しずつ投資する「分散投資」となることを考えれば、REITという選択肢は検討に値する。

 最後に、税法上のメリットについて税理士と相談してみるといいだろう。自分で不動産を所有すると、賃料の所得に対して所得税が累進課税で課せられるが、REITには法人税がかからないので、REITを持っていれば得られる値上がり益や配当に対して20%強の源泉分離課税を負担するだけでいいからだ。

 本稿は、以上である。なお、本稿は筆者の個人的な見解であり、筆者の属する組織などとは関係がない。また、当然であるが、投資は自己責任でお願いしたい。