政府が「自宅療養」へ
方針を変更した背景

 アメリカのCDC(米国疫病管理センター)の内部文書によれば、デルタ株はひとりの感染者が平均8~9人に感染させる力をもっていて、感染力としては、はしかや水痘(すいとう)と同程度だと言うのです。変異前のコロナウイルスはひとりの感染者から2.5人程度しかうつさなかったわけですから、変異種の感染力が大きいことがわかります。

 実際に、デルタ株のまん延で直近のクラスターの状況が変わってきました。大規模なものとして、大阪の阪神百貨店梅田本店では従業員128人に感染が広がりました。阪急百貨店うめだ本店でも34人の感染が確認されていますし、東京でも新宿のルミネエストで61人の感染が確認されました(感染者数は8月4日現在)。

 報道でわかるとおり、第5波の感染経路はもはや職場・学校・家庭がトップ3になっています。去年の夏時点では夜の街と会食が全体の3分の1と大きな構成比を占めていたのですが、政府が目の敵にして営業自粛に追い込んだことで、昨年11月時点ですでにそれらの経路は10%ほどに抑え込まれています。

 そのような状態なので、これから先の感染拡大を抑えるには職場・学校の閉鎖、各家庭での外出を抑制するしかなく、今の政府にはそんなことはできないことからデルタ株はどんどん広まってしまっている。これが実効再生産数が1.7まで上昇した今の東京の現実です。

 このような状況下で当然のように東京都のコロナ病床はひっ迫していて、新型コロナ対応のベッドの使用率は47%、重症者対応のベッド使用率は64%まで上昇し、緊急搬送されたコロナ患者が100件の病院から断られ続け、搬送までに8時間がかかるという事態にまでなりました。

 その前提で医療崩壊を防ぐにはどうしたらよいか?その対策として政府が表明したのがコロナで入院する人の対象を重症者や重症化リスクがある人に限定し、それ以外は自宅療養を基本とする方針転換です。