コロナ後の需要に
強気姿勢のJR東海

 東海道新幹線を擁するJR東海はどうか。東海道新幹線の売り上げが連結売上高の約7割を占める同社もまた、外出自粛の影響により新幹線の利用が低迷し、苦しんでいる。売上高は前年比40%増の約1806億円だったが、コロナ前との比較では4割弱の水準でしかない。

 営業費は前年比3%減の約2059億円で、こちらも2019年度と比較すると22%減少しているが、臨時列車の運行本数は既に最大限削減されており、これ以上の上積みは難しそうだ。この結果、営業損失は約253億円、純損失は約284億円だった。

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 コロナ禍以降の四半期ごとの運輸業営業利益と新幹線利用状況を比較してみると、東海道新幹線の損益分岐点は、利用状況でいえばコロナ前の4割程度であるようだ(2020年度第3四半期は前年比46%の利用で約200億円の営業黒字だった)。そしてそれはすなわち、JR東海の損益分岐点でもある。

 7月29日時点の7月の利用状況は2019年度同期比43%と、緊急事態宣言発出下ながら回復傾向となっており、JR本州3社の中では最も黒字化に近いと言えるが、本格的な回復は外出自粛が解除され、県をまたぐ往来が再開されるまで待つことになるだろう。

 問題はその時に利用がどこまで戻るかということだが、他の鉄道事業者が需要は感染拡大前の水準には戻らないと見ているのに対し、JR東海は需要が元に戻るという強気の姿勢だ。東海道新幹線の需要はリニア中央新幹線計画の成否にも直結するだけに、今後の利用状況の推移に注目が集まる。