三陽商会の先行きが不透明だ。財務体質は良好だが、屋台骨のバーバリー事業のライセンス契約終了が近いだけでなく、百貨店ビジネスの陳腐化、人件費の高止まりという問題に直面している。

「1、レインコート、その他のコート類、各種衣料、繊維製品および装飾雑貨類の製造、販売」

 大手アパレルメーカーである三陽商会。会社登記簿の目的欄の1番目にはこう記されている。

 三陽商会はコートを日本に広めることで成長してきた企業だ。中でも英バーバリー社とのライセンス契約によって製造・販売したコートは人気を呼び、今ではコートだけでなく幅広いアイテムを持つファッションブランドとして同社の大黒柱となっている。

 しかし後述するように、このバーバリー事業に危機が迫っている。その上、売り上げの大半を稼ぎ出す百貨店ルートの落ち込みが激しく、人件費も同業他社に比べて高止まりしている。三重苦によって業績の低下には歯止めがかからず、売上高は4期連続で減少、営業損益は低迷している(図1)。まさに危機的状況といえる。

 三重苦の中でも最も深刻なのがバーバリー事業だ。

「売上高の約50%はバーバリー。利益率も高い」(アパレル業界幹部)という基幹事業だが、そのライセンス契約が2015年6月で終了する。ライセンス元のバーバリー社は三陽商会をはずして、もうかる日本事業を自ら手がけることを検討している。

 当然、三陽商会はライセンス契約の継続を求めて交渉を続けている。先行きは見通せない状況だ。

 三陽商会にとっての“ベストシナリオ”は、現行の内容でライセンス契約を続けることだが、これは難しいだろう。