サブスク型メディアのジレンマ

「パレートの法則」をご存じの方は多いと思います。「売上の8割を上位2割の顧客が生み出している」など、一部の要素が全体に大きな影響を与えているという説です。メディアビジネスでもこの法則は当てはまることがあります。特にコンテンツ(記事)とページビュー(PV)の関係では顕著で、PVの9割を上位1割の記事が生み出していることも珍しくありません。

 一方、サブスク型メディアではこの法則が当てはまらないこともあります。有料会員しか読めない記事を配信するメディアの場合、PVではなくその記事をきっかけに有料会員になったユーザーの数が問われます。ところがPV型メディアのようにごく一部の記事で有料会員の大半を取るようなケースはまれで、新規会員獲得(以下、「CV」)の8割を上位5割の記事でようやく生み出すという、なだらかな分布の形になっています。以下がその様子を表したグラフです(数字はあくまでイメージです)。

 もちろん、メディアによって差はあるはずですが、サブスク型メディアとPV型メディアでは、このように記事とKPIの関係性が異なります。筆者はこうした記事とKPIの関係を「メディアのカタチ」と呼んでいます。PV型メディアを「一部の記事で大半のPVを稼ぐ=ホームランを前提としたメディアのカタチ」とするならば、サブスク型メディアは「ヒットを積み重ねるメディアのカタチ」と言うことができます。

 記事のPVやCVを多い順に並べたとき、数字を図式化すると以下のような形になるイメージです。

 しかし有料会員しか読めない記事には当然ながら高いクオリティを要求されるため、「ヒットを積み重ねる」といっても、そう簡単に量産はできません。数を作れない、でも一発逆転ホームランも難しい。サブスク型メディアには、こうしたジレンマがあります。