振り返りは主に2種類あり、

1. 個別の記事や特集について、記者や編集者と筆者のようなデータ分析系のスタッフが行う振り返り
2. ビジネスサイドのスタッフが収益に関するKPIについて行う振り返り

 に分かれます。前者は記事のUUやCVR、読者の属性などについて事前の狙い通りだったかを振り返りますが、後者はもう少し全体を俯瞰し、記事の本数やサイト全体のUU、CVRなどについて見ていくことになります。

 常に予測と結果の比較を行い、コンテンツの作り方、見せ方をブラッシュアップする。こうした動的な営みだけが「数は作れないがホームランも難しい」というジレンマへの解答です。

サブスク型メディアのKPI

 サブスク型モデルでは新規の会員獲得だけでなく、既存会員の維持(継続)も重要です。以下にサブスク型メディアで使うKPIの一例を示します(各用語については、文末の「補足:」を確認下さい)。

獲得
・(有料会員向け)記事本数
・記事のUU
・CVR(新規会員獲得数/記事UU)

継続
・初回課金率
・nヵ月目の(会員の)残存率
・既存会員のアクティブ率

その他
・対象読者属性の含有率

 継続に関するKPI「初回課金率」は、最初の課金の壁を超えるかどうかが大きなポイントのため、切り出して注目しています。また「既存会員のアクティブ率」は、アクティブにサイトを訪れてくれるユーザーの方が課金率が高いという前提に立っています。多くの場合、コンテンツとの接触度合いと課金率は相関するので、こうしたユーザーのアクティブ度合いに関するKPIがあったほうが良いでしょう。

 なお、こうした指標を、誰が、どこまで追うかは議論が必要なポイントです。1つのやり方としては、

・現場の編集者、記者:自分の担当した記事のUUやCVを知る
 → 自分たちのコンテンツ作りに生かす
・編集部門側のマネージャー、ビジネス側のスタッフ:初回課金率や既存会員のアクティブ率などの指標も知る
 → 事業全体のバランスを見てサービスやコンテンツの設計に活かす

 といった形で2つに大別する方法があげられます。

 初回課金率や既存会員のアクティブ率などは、コンテンツ以外にもメルマガやセミナーといった記事以外のサービス面の影響もあり、コンテンツ作りの指針として活用するのが難しいためです。現場の編集者、記者はあくまでコンテンツ作りのプロであり、記事のタイトルや連載の方向性で迷った際に判断の手助けとなるようデータを使うことに徹するのが良いように思われます。

 一方で、編集部門のマネージャーやビジネス側のスタッフは、コンテンツやサービスの編成を行う立場にあることが多いため、初回課金率や既存会員のアクティブ率といった事業収益に関わるKPIも見たうえで業務を進める必要があります。

 編集者や記者がどこまでビジネス側の事情に関わるかは企業によって大きく異なるため、あくまでこれらは一例です。が、KPIは単なる数字ではなく事業と人(社員)を結ぶものですから、各人の役割に応じたKPIを見ていくことが重要です。