特例公債法案について、民自公3党が合意し成立が確実になった。これで、予算切れによって日本版「財政の崖」が回避できたのは評価できるが、その過程で、国会できちんとした「交渉」ができないことが浮き彫りになった。

特例公債騒動で得をしたのは誰?

  合意内容は3党の幹事長・政調会長の確認書にあるが、その中で、「……公債発行額の抑制に取り組むことを前提に、……2015年度までの4年間は特例公債法の発行を認める」とある。

  この前提をどのように担保するかが問題であるが、それには言及されていない。「財政の崖」を一時的に凌ぐために、今年度予算書では資金繰り債20兆円の発行が書かれているが、財務省はそれを財政規律の観点から財政法上一切認めなかった。その一方で、地方交付税交付金の抑制をしたため、地方公共団体では財政運営に支障が出るため、民間からの一時借入で凌がざるを得なかった。

 ただ、よく考えてみれば、財政関係法律は、国と地方で基本的には同じである。財務省が根拠とする財政法と同じことが、地方自治法にも地方自治体の一時借入金について「その会計年度の歳入をもって償還しなければならない」と書いてある(235条の3)。

 このように特例公債法案では、財務省の横暴ばかりが目立つ。それを唯一抑えるのが、国会での予算修正だ。

 ところが、民自公の3党合意では、2015年度までの4年間は赤字国債の自動発行が認められた。特例公債法は、それを通すかわりに政府予算案(=財務省原案)を修正するという、国会の予算審議のために使うべきものだ。海外では国会での予算修正は当たり前だ。ところが、自動発行が可能になった3党合意は、「予算は財務省原案に指一つふれさせない。だから、国会で政府予算案を修正させない」という財務省の思惑にまんまと乗せられたことになる。