組織として録音に取り組むべき

 そもそも、記録はクレーム対応の基本です。クレーム対応は対応した個人がおのおので解決するものではなく、組織として取り組むべきものです。

 担当者がやりとりや顛末(てんまつ)を報告する必要があったとしても、あとから混乱した当時の状況をきちんと詳細に思い出すことはまず不可能です。そのため、クレーム内容をできるだけ詳細に記録しておくことが大切なのです。電話でのクレームは録音機能付き電話などで対応し、状況を時系列で文書にまとめておくと、悪質なクレームが続いたとしてもその後の対応はスムーズになります。

 クレーム対応の現場では「言った、言わない」の水掛け論になりやすいものです。記録はそれを防いでくれるだけではなく、肉声を録音することで現場の状況、特にクレーマーの人となりを知る手掛かりにもなります。

 また、「録音されている」と思えばクレーマーの暴言を抑制することもでき、逆に対応側としても慎重に言葉を選ぶことになるため、クレーマーに言葉尻をとられるリスクが減ります。

 いったんこうした行為が収まったとしても、相手が納得したわけではないので、後日再びやって来ることは十分予想できます。その際、同じ轍を踏まないためにも録画・録音した記録を有効活用すべきです。いきなり業務妨害や傷害罪で訴えることは無理でも、組織として法的な対応を視野に入れているとした姿勢を見せることが重要であり、毅然とした対応の入り口になるからです。

 組織全体でクレーマーに対応しようとするこうした姿勢は、コロナ禍の中で「カスハラ(カスタマーハラスメント)」への不安を抱える現場の働き手たちを勇気づけます。宝の持ち腐れにならないよう、録画・録音した記録に基づいて、「次」に備えておくことも忘れてはいけません。

(エンゴシステム代表取締役 援川 聡)