アナフィラキシーショックで
アドレナリンが効かない場合も

 現在、日本で接種されているCOVID-19のワクチンは、ファイザー社とモデルナ社(武田薬品)のもので、1人が同じものを2回接種する。

 海外の臨床試験では、接種が2回完了した場合のワクチンの効果は、ファイザー社は95%、モデルナ社は94%という高い発症予防効果が確認されている。感染そのものを予防する効果については未知数だが、ワクチンを接種したグループの方が、接種していないグループよりも、感染者数が少ないという結果も報告されている。

 ただし、ワクチン接種時には、一定の割合で副反応が起こることも報告されている。なかでも、多くの人が心配しているのが、接種直後に起こる可能性があるアナフィラキシーショックではないだろうか。

 アナフィラキシーは、アレルギーの原因となる抗原(アレルゲン)が体内に入ることで、短時間のうちにじんましんなどの皮膚症状、腹痛や嘔吐(おうと)などの消化器症状、息苦しさなどの呼吸器症状が、複数同時に起こる強いアレルギー反応だ。

 そのなかで、血圧低下や意識レベルの低下を伴い、命に危険が生じるほどの重症の場合をアナフィラキシーショックという。

 アナフィラキシーショックは、食品や蜂毒のほか、医薬品の投与などによって引き起こされるもので、ワクチンが原因となることもある。

 COVID-19のワクチン接種でも、アナフィラキシーショックは起こっており、これまでに日本で確認されている件数は、100万回あたり、ファイザー社が5件、モデルナ社が2.2件と報告されている(※)。

(※)厚生労働省 第66回厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会副反応検討部会、令和3年度第15回薬事・食品衛生審議会薬事分科会医薬品等安全対策部会安全対策調査会(合同開催)の資料、2021年8月4日「副反応疑いの報告の状況について」より。集計期間は、接種開始から21年7月25日まで。ブライトン分類に基づき専門家によりアナフィラキシーショックと評価された件数。

 アナフィラキシーショックは避けたいが、いつ誰に起こるのかは分からない。ただし、症状が出た場合の対処方法は確立されており、COVID-19のワクチンの接種会場となっている医療機関や集団接種センターでも、急変に即座に対応するための医薬品は準備されている。

 通常、アナフィラキシーショックでは、急激に低下した血圧や心拍数を上げたり、末梢血管を収縮させたりするためにアドレナリンが投与される。その他、症状を和らげるために気管支拡張薬、抗ヒスタミン薬、ステロイド薬などが使われることもある。

 ショック症状が出た場合は、すぐにこれらの薬剤を使って適切な処置が行われるが、日常的に服用している薬の種類によっては、まれにアドレナリンが効かないこともある。

 その可能性が高いのが、β遮断薬(ベータブロッカー)を服用している場合だ。