守られない公約ばかりの中、「月50万」は達成できている

 言うまでもないが、政治家の「公約」というのはほとんど達成されない。古くは民主党のマニフェストもそうだが、安倍・菅政権も細かく検証をすれば公約破りは山ほどある。それは政治家側もよくわかっているので、「子育てや医療・福祉を頑張ります」とか「誰もが笑顔になれる社会を目指します」という「ふわっ」としたスローガンを押し出して、「公約違反」にならないようにしている。

 もちろん、河村氏も実現できていない公約はある。が、自身の給与削減とともに、職員や市議会議員の給与も減らして、「市民税の減税5%」を平成24年から続けている。

 「マスコミ受けのパフォーマスだけ」「市長のせいで職員は機能不全だ」などなど辛辣な批判も多いし、早く消えてくれと願う市議会議員や政党も多い。それでも2009年の初当選以来、12年で5回の選挙で圧倒的な勝利をおさめているのは、名古屋市民が河村氏の「パフォーマンス」をそれなりに評価をしているからだ。

人間・河村たかしの言動と「政治家の給与削減」は切り離すべき

 では、「月50万」によって政治家としてのパフォーマンスが低下したことで、「メダルかじり」という非常識な行為が引き起こされたのではないとしたら、どういった理由で河村氏はあんなことをしたのか。

 16日にあらためて謝罪をした際に、「周りを盛り上げようと言ってきたがハラスメントに該当すると分かった」とご本人が述べているように、報道陣の前であれをやれば「ウケる」と勘違いしていたのではないか、と個人的には思う。

 河村たかしという政治家は、「騒ぎ」を起こすことで存在感を示してきた。国会議員時代、文化財としての価値のあった愛知県立旭丘高校の校舎取り壊しに反対し、自分自身を鎖で巻いて校門で座り込みをした。新しく議員宿舎を建て直すことに反対していた時も、入居せずに家賃7万5000円のマンションから国会に来た。

 その「思いたったら即行動」というのが今回は裏目に出た。名古屋城の金のシャチホコもかじっていたと蒸し返されたが、河村氏の中ではそれと同じ意識でやってしまったのではないか。

 だから、メダルにかじりついたというニュースを聞いた時、正直それほど驚かなかった。むしろ「いかにもやりそうだ」と思った。

「ずいぶんわかったようなことを言うじゃないか」という声が聞こえそうだが、多少なりとも河村氏の人間性は知っているつもりだ。2005年、雑誌の編集者だった頃に河村氏の連載を担当したことが縁で、その後もいくつかの著書を手伝っているからだ。

 当時は衆議院議員だったが、その頃から破天荒だった。ある時、議員会館の事務所でインタビュー中、若い頃に履いていたジーンズが見つかったという話題になった。すると、「どれ、ちょっと履いてみるか」といきなりズボンを下ろしてパンツ一丁になったので、びっくりしたことがある。そういう人なのだ。

 擁護をしているわけではない。ただ、「人間・河村たかしの非常識さ」に向けられる批判と、河村氏が実行してきた「政治家の給与削減」や「減税」は切り離して考えるべきだ、と言いたいだけである。