タリバンもそれに応じる姿勢を示している。元々凶悪な「イスラム国」とは対立していたのだ。米国がタリバンに圧力をかけようとしアフガニスタン政府の預金を凍結すれば、タリバンは一層、中国に頼ることになるだろう。

 アフガニスタンには天然ガスや原油、銅鉱山など未開発の鉱物資源があり、中国はすでにアフガニスタン北部の油田開発で協力を始めている。

 ロシアも国内のチェチェン独立派などイスラム過激派の行動が再び活発になることを警戒し、タリバンに接近を図っている。

 だが旧ソ連時代、アフガニスタンに侵攻したもののイスラム過激派に敗北して1989年に撤退。結局、ソビエト連邦自体が崩壊することになった。

 この教訓はロシア指導部には残って、タリバンとは良好な関係を築くことに努めるはずだ。

 タリバンが多民族国家アフガニスタンの統治を続けられるか否かは、世界の不安定要因になるだろう。

ベトナム後は慎重だった米国
対中強硬世論、沈静化か

 タリバンに敗れた米国が、協力者を見捨てる形で撤退すれば、世界の指導者を自負した威信を失うのは不可避だ。その腹いせに他国の協力を得てタリバン政権を締め上げようとしても、負け惜しみとの冷笑を招いて傷を大きくすることになりかねない。

 ソ連はアフガニスタンのイスラムゲリラと戦って敗れ、1989年に完全撤退したが、東欧支配国と国内統治の要だった軍事的威信を失い、91年に崩壊した。だが、米国は旧ソ連のように軍事的威信だけが頼りではない。

 米国は昨年末で1460兆円という途方もない対外純債務を抱える最大の債務国(日本は純債権が356兆円で最大の債権国)だが、米国の金融機関は他国から預かった資金を運用して世界の金融を牛耳る力を持ち続けている。

 CNNテレビやAP通信などのメディアは世界に影響力を持つから、旧ソ連のようにアフガニスタンでの敗戦で超大国の地位を失うことはありそうにない。