中国版ワクチンパスポートに潜む
もう一つの思惑

 中国政府は国民の命を守るという大義名分を唱えることで、これまで以上に私権制限を堂々と行うことができるようになった。接種証明書をほぼ全員のスマホへ入れることで、中国のテック企業であるテンセントが運営するメッセージアプリであり、検閲やユーザー監視が行われているという批判の声もあるWeChat(ウィーチャット)を超えるデジタル監視体制ができつつある。

 そう考えると、中国にとっては中国製ワクチンの効果はそれほど問題ではない。監視アプリを全員へ導入させて日常的に起動し機能させることのほうが国内を統制する上で重要なのだろう。

「新幹線(高速鉄道)に乗るのに接種証明アプリが必要なので入れています。当然、私の位置情報や端末内の情報は抜き取られていると思います。そう認識して、VPN(仮想プライベートネットワーク)を入れた別端末を用意して日本とのやり取りするなど使い分けるようにしています。周りの日本人たちも同じような認識で監視をできる限り回避させていますよ」(大連在住の日本人)

 仮に北京冬季オリンピックが開催されて、無事に終わったとしても、中国政府は、継続的なコロナ対策を理由に入出国制限をある程度維持すると考える在留邦人は多い。

 そうなれば、中国政府は合法的に中国人の海外出国者を減らせる。さらに、これまで日本国籍を持つ者なら誰でもビザなしで入国できたが、中国の接種証明書を持っていないと7日間隔離するなどの制限をかける場合、日本人をはじめとする外国籍者の入国も減らすことができる。

 この状態こそが毛沢東をロールモデルにしているとされ、前例を打ち破って3期目を目指す習近平国家主席が理想とする「中国共産党が指導する“正しい”中国」に近づくのではないだろうか。

(筑前サンミゲル/5時から作家塾(R))