コロナ禍の学校再開で
危惧されること

 さて、ここでさらに問題になりはじめているのが「学校の2学期の再開を遅らせたらどうだろうか?」という意見です。

 政府分科会の尾身茂会長が「学校が始まってくることで、また感染拡大や医療逼迫もあり得る」と述べて各自治体に学校再開時期を見直すように求めたことがニュースになりました。

 これは実際に裏付けのある話です。さきほど7月までは家庭、職場、学校が3大感染経路だったと述べました。それが、夏休みにはいった8月のデータをみると各都道府県で顕著に学校経路の感染が減っているのです。授業だけでなく部活も課外授業も控えているせいで少なくとも3つのうちの1つの感染源を1カ月だけ抑え込むことができた。その一方でデルタ株が急拡大したのも8月です。

 そして足元の第5波の特徴は、東京都の場合、若者の感染者が多いことで、具体的には10代、20代、30代で全体の3分の2を占めています。10代だけでも14%と、もはや少ないとはいえない構成比を占めています。

 この状況で授業を再開させると、「学校」がデルタ株をさらに拡散させるリスクになる可能性がある。それは論理的には十分に予測できることです。今回の第5波で家庭内で発生した感染が、生徒同士で感染拡大し、それが別の家庭に伝わってその家族にも感染する。職場→家庭→学校→家庭→職場というループが無限に拡大することが危惧されるのです。

 しかし、にもかかわらず2学期の再開タイミングは各自治体の判断にゆだねられています。東京都では一部の自治体で一週間ほど開始を遅らせる判断をしているところはありますが、大半の自治体は9月1日に授業再開を予定したままです。

 ここまでメカニズムがわかっているのに、なぜ政府は新しいコロナ対策を表明しないのでしょうか?

 ここからは私の過去の経験に沿った私見だと申し上げておきます。